月次市場見通し:企業利益の増加とアジア諸国の脱オイル
By Daniel Morris, Chief Market Strategist; Alessandro Tentori, Chief Investment Officer, Europe; Chi Lo, Senior Market Strategist, Asia Pacific …
05/08/26
By Daniel Morris, Chief Market Strategist; Alessandro Tentori, Chief Investment Officer, Europe; Chi Lo, Senior Market Strategist, Asia Pacific …
05/08/26
2026年上半期における世界のマクロ経済見通しは、中東紛争への懸念、人工知能(AI)への継続的な投資拡大という2つのテーマが焦点となりました。 原油価格の高騰は、エネルギー依存型の経済や個人消費にとって脅威となりました。一方で、AIへの設備投資によってデータセンター建設に必要な建設資材やネットワーク機器、その他の関連分野への需要が急増したことから、いくつかの経済圏において製造業の経済活動が活性化しました。 全体として、成長見通しは下方修正されたものの、その修正幅は限定的なものにとどまりました。 大きな懸念となっているのは、エネルギー価格の高騰がインフレに与える影響で、結果として、主要中銀はよりタカ派(金融引き締め)の姿勢を強めています。 市場は政策金利の引き上げを織り込み始めたものの、中東での紛争開始後、実際に金利を引き上げた主要中銀は欧州中央銀行(ECB)と日本銀行のみでした。 こうした世界的な情勢の中でのわずかな金融引き締めは、金融市場やクレジット需要の動向にほとんど影響を与えていないように思われます。世界経済は重大な供給ショックに直面しましたが、再びその底堅さを証明したと言えるでしょう。 より明るい先行き 米国とイスラエル、イラン間での停戦合意を背景に、2026年下半期の経済見通しは改善しました。 ホルムズ海峡を通るタンカーの航行が再開されたことを受けて原油先物価格は下落しました。ただし、石油やその他のエネルギー市場が正常化するには時間がかかる見込みで、消費者はエネルギーコストの高止まりに直面する可能性があります。それでも、エネルギー価格が紛争前の水準に戻りつつあることは、成長とインフレ見通しにとって明るい動きとなるでしょう。 エネルギー価格も含めたインフレ率はすでにピークを過ぎた可能性があり、中央銀行は利上げ期待を高めるような動きには消極的になっているとみられます。とはいえ、金融緩和が期待できる状況でもありません。金融政策に何らかの動きがあるとすれば、米連邦準備制度理事会(FRB)や英中銀(イングランド銀行)による緩やかな金融引き締めが依然として有力視されます。 投資家は、今後数カ月のインフレ動向に注目し、どのような二次的影響が生じたか、また長期的なインフレ期待が払拭されたかどうかを評価することになると思われます。当社の見解としては、インフレ期待はまだ完全に払拭されておらず、中東での紛争が再燃するリスクもあるとみています。しかし、基本的な見通しはより楽観的で、先進国および新興国経済の成長がある程度は改善する可能性が高いでしょう。 AIのバリューチェーンに属する一部の企業の収益性について疑問の声も上がっているものの、AIインフラ(半導体、PCハードウェア、データセンター)への投資に加えて、企業によるAI製品の導入に向けた投資は、いずれも今後も成長の追い風となり続けると予想しています。 債券市場の見通し:良好なリターン獲得へ 中央銀行が当面の間、現在の政策金利水準を維持できそうな状況であることから、2026年下半期の債券市場は堅調になる可能性があります。 ハイイールド債などのインカムリターンが高いセクター、インフレ連動債、あるいは金利感応度(デュレーション)が限定的であるセクターは、上半期に好調なパフォーマンスを示しました。当社では、ハイイールド債や新興国債券は、下半期も堅調なパフォーマンスを維持するとみています。 主要国の国債利回りは、名目GDP成長率から適切な水準と言える範囲内で落ち着いているようです。そして、これらの国債利回りは、世界金融危機後の平均的な水準を上回っています。 中央銀行はもはや長期金利を抑制することを目的とした金融政策を追求していないため、現在の長期金利の水準は、金融危機以前に見られたように、マクロ経済情勢をより強く反映したものとなっています。 大まかな目安として、米国の10年債利回りは4.25~5.0%程度の範囲と想定され、欧州国債はソブリン・スプレッドに応じて(イタリア、スペインなど周縁国の利回りはいずれもドイツの利回りより若干高くなる)、2.5%~4.0%程度の範囲に落ち着くと想定しています。 インカムリターンを重視する理由 もちろん、構造的なインフレ率の上昇や政府債務の水準について、長期的な懸念はあります。しかし現時点で、主要国債利回りは安定しており、それがクレジット市場に対する楽観的な見方につながっているようです。…
13/07/26
英首相交代へ 英国の投資家は、首相交代という新たな課題に直面しています。これはまた、英国経済の成長促進や英国内の地域間格差の是正に重点を置いた経済政策への転換を示唆している可能性があります。スターマー首相の後継候補であるアンディ・バーナム氏は、英政府の財政ルールを重視することを約束しています。英国債に対する市場の信用度は、経済の安定を支える重要な柱となりますが、首相の辞任以来、英国債利回りは低下しています。市場の安定にとっては、閣僚人事(とりわけ財務相の人選)とバーナム氏の政策課題の策定という2つの動きが極めて重要となるでしょう。 成長促進策の一環としてインフラ投資を拡大するにあたり、財政ルールに則った借入の範囲内に収めることができるかどうかが、極めて重要となります。現在の英国債利回りは、英イングランド銀行(中銀)が利上げを見送る姿勢を示していることを考慮すると、魅力的な水準に見えます。英国の株式市場も、首相交代による政策の転換から恩恵を受ける可能性があります。ブレグジット(英国のEU離脱)の国民投票から10年を迎え、この間に英国が被った経済的損失に関する分析が行われる一方、英FTSE 350指数の直近12カ月の株価収益率(PER)は、S&P 500指数の60%程度にとどまっており、2010年以降の平均水準も下回っています。成長見通しの改善があれば、英国の投資家にとって好材料となる可能性がありそうです。 堅調な業績、先行きが不透明な市場 原油価格は6月のピーク時から約30%下落したにもかかわらず、株式市場にはほとんど安心感が見られません。株価のバリュエーションや業績見通しへの懸念が再燃したことから、テクノロジー株式は再びボラティリティが高まっています。経済指標は総じて好調ですが、非テクノロジー関連の株価指数は小幅な上昇にとどまっています。米国の労働市場では3カ月連続で着実な雇用拡大が続いているほか、購買担当者景気指数(PMI)は、米国、欧州、日本における製造業活動の堅調さと、米国および日本におけるサービス業の拡大を示しています。 それでも株式市場が慎重な姿勢を見せている理由の1つは、中東情勢をめぐる不透明感が依然としてくすぶっていることです。また、もう1つの理由としては、(実質)金利の上昇が見込まれている点です。欧州中央銀行(ECB)はすでにインフレ懸念を理由に利上げを実施してしており、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ新議長も、物価安定の実現に意欲を見せています。とはいえ、企業の利益見通しは明るいと言えます。4-6月期の利益成長率に関する市場予想は、MSCI欧州株指数が12%増、ラッセル・バリュー指数が17%増、ナスダック総合指数が30%増となっています。さらに、新興国市場におけるテクノロジー企業の利益は138%増加すると見込まれています(韓国では840%の増益見通し)1。こうした力強い利益の伸びは、今後も引き続き株式市場を下支えすることが予想されます。 ECB:利上げの緊急性はない 2026年の金融政策に対する市場関係者の見通しは、原油価格の急騰を受けて大きく変化しました。2025年末時点では、ECBは2026年を通じて政策金利を据え置くとの見方が中心となっていました。しかし、ECBの6月会合での0.25%の利上げを受け、最近では年末までにさらに1回以上の利上げが行われるとの見方が強まっています。こうした予想は、原油価格が1バレルあたり80ドルを下回る状況になっても、その見方は大きく変わっていないようです。この原油価格の水準は、ユーロシステム当局者が「より穏やかな」予測シナリオで示した水準を10%近く下回っています2。 原油価格の急騰がエネルギー以外の商品やサービス分野にも波及していることが確認されるまで、市場の利上げ観測と変動の激しい原油価格との間で起きている乖離は、継続することも予想されます。ECBは、最終的には「正常化」のシナリオを支持し、利上げを温存しつつ、さらなる情報を待つことになるかもしれません。その後、ECB自身が認めている通り(そして私たちの金利予測モデルでも裏付けられているように)、中立金利はわずかに上昇している可能性もありますが、その水準に向けて再び調整を行うことになるとみています。その結果、マネーマーケット金利の低下、国債イールドカーブの若干のスティープ化(右上がりになること)、そして全体として金融環境の緩和が見込まれます。 投資アイデア – 米国および新興国におけるディスラプティブ(創造的破壊)・テクノロジー戦略 根拠: AIブームは、グローバル経済全体に革新的で有益な新製品やサービスを提供するとともに、事業活動や雇用体系を変革する力を秘めています。より強力なアプリケーションが開発されるにつれて、AIインフラ、バリューチェーン、ソフトウェア・アプリケーションへの投資機会はより多く創出されることになるでしょう。このテクノロジーの未知なる可能性は、引き続き強力な設備投資と潜在的なリターン機会の創出を下支えすると思われます。 投資アイデア – 欧州株式 根拠: 欧州の経済的自立の達成に向けた戦略的な重点分野が、引き続き2026年の欧州株式の投資機会のサポート材料となるでしょう。防衛やデジタルインフラ、グリーンテクノロジーへの支出が欧州全域で優先され、長期にわたって欧州主要国や欧州連合(EU)全体の取り組みからも恩恵を受けると予想されます。この影響は多くのセクターに波及することも期待されます。欧州株式は米国や日本よりも低いバリュエーションで取引されているため、欧州株式の潜在的な投資機会は多いとみています。 投資アイデア – 米国ハイイールド債 グレジット市場の投資環境は引き続き良好です。世界経済の成長はエネルギーショックに対して耐性を示し、企業収益も堅調さを維持しています。金利の上昇により利回りが上昇し、インフレ率は2.0%を上回って推移していることから、米FRBによる年内の利下げの可能性はほぼなくなったとみられます。これにより、クレジット市場の利回りは魅力的な水準で推移する見込みです。投資適格社債の発行が増加している一方で、ハイイールド債市場は、信用力の向上や、テクニカル面およびキャッシュフロー面での好材料により、引き続き恩恵を受けています。7%を超えるハイイールド債の利回りは魅力的であり、2026年上半期の米国ハイイールド債のインカム収益は3%程度となっています。この市場セグメントでは、厳選された銘柄選択とレバレッジの適切な活用により、指数に対してトータルリターンをさらに向上させる可能性もあると思われます。…
06/07/26
選別が求められる欧州株 市場では、米国とイランの紛争によって引き起こされたエネルギー・ショックは、米国よりも欧州の方が深刻との見方が優勢です。米国がエネルギー輸出国であるのに対し、欧州はエネルギー輸入国だからという理由です。たしかにGDPの観点からは正しいかもしれませんが、企業や個人にとって、コストの高くなったエネルギーが輸入されたものであるか、国内で生産されたものであるかはあまり重要ではありません。 それにもかかわらず、欧州経済は米国よりも悪い状況にあるように見えます。欧州の購買担当者景気指数が、サービス業と製造業の両部門で悪化を示した一方、米国では企業活動が活性化しています。株式市場も同様の傾向を示しており、MSCI欧州株指数が5月末時点でイラン紛争開始前の水準と比較してマイナス圏となる一方、S&P500指数は10%程度上昇しています(執筆時点)。ただし、この差は、主にテクノロジー株の力強いリターンがもたらしたものでした。テクノロジー株を除いても、欧州は若干アンダーパフォームしているものの、その差は限定的です。欧州連合(EU)の「戦略的自立」1の取り組みによって恩恵を受けると予想される欧州企業だけを見ると、その差はほとんどなくなります。2026年の欧州株投資での成功は、銘柄の選別がカギとなるでしょう。 長期金利に関する考察 長期国債の利回りは、世界的なパンデミックからの正常化の過程で、大幅に上昇してきました。例えば、米30年債の利回りは2021年末から約3%程度の上昇となっています。日本国債もドイツ国債も同様の上昇を示したほか、英国債は4%超の上昇と際立っています。長期金利に影響を与える要因については、バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が行った2013年の講演が有名ですが、その時期と比べると、長期の経済成長率、期待インフレ率・実質利回りのいずれも上昇していると考えられます。さらに、債券価格の変動性の高まりや株式・債券間の正相関によってタームプレミアム(期間プレミアム:期間の長さに伴って求められる上乗せ利回り)の上昇も見られました。 景気循環の要因に加えて、中央銀行が資産購入プログラムを縮小し、債券発行の拡大にそなえて投資家が警戒感を強めていることから、債券の需給バランスが崩れつつあるようです。国際通貨基金(IMF)の見通しでは、先進国のGDPに対する財政赤字は今後5年間で平均4.6%に達し、GDP比の債務残高は2025年末の108%から115%程度に上昇することが見込まれています。このように債券はまさに転換期を迎えており、戦略的な資産配分における国債と社債の相対的価値も変化していることに留意する必要があります。 AIと生産性に関する議論 サンフランシスコ連邦準備銀行(連銀)による最新の「エコノミック・レター」では、人工知能(AI)と生産性に関して繰り返される疑問について取り上げています。米国経済はAI投資によって、生産性の上昇を伴う成長時代に入ったのか、という質問ですが、生産性の測定が本質的に難しいこともあり、答えは単純ではありません。 労働生産性(労働時間1単位当たりの生産高)は近年急上昇しましたが、全要素生産性(TFP)は、経済全体の効率向上を反映するものであり、新しいテクノロジーが労働生産性を向上させたという事実だけを反映しているわけではありません。サンフランシスコ連銀の最新の推計によると、TFPの伸びは労働生産性の伸びに大きく遅れをとっており、最近のAIの伸びは根本的な効率性の改善というよりも、むしろ既存ツールの利用強化に起因していることを示唆しています。 生産性は学術的な議論だけでなく、経済政策にとっても重要です。ウォーシュ新FRB議長は、AIは大きな生産性向上をもたらすとの見方を示し、このテクノロジーによって「構造的なディスインフレ」につながると考えているようです。その根底にあるのは、潜在成長率が高まればインフレ目標の範囲内でも経済成長を加速させることができる、というものです。それでもサンフランシスコ連銀は、生産性の上昇を伴う成長時代に入ったと断言するのは時期尚早であると結論づけています。1990年代初頭のテクノロジーブームよりも希望は持てるものの、まだ確証はないということでしょう。 資産クラス別概要 表明された見解は、資産クラスのリターンおよびリスクに関する BNPP AMの予想を反映しています。各色は長期的に観測される動向と比較した今後3~6か月のリターンの見通しを示しています。 当市場見通しは、BNPP AMの予想を示したものであり、資産配分を含む投資に関する推奨や助言を意図したものではありません。 * BNPP AMでは、企業が活用している6つのメガトレンドを特定しました。これらは、進化する世界経済を乗り切って行くのに最適な位置にあると考えるものです:自動化とデジタル化、消費者の傾向と長寿化、エネルギー転換、生物多様性、自然資本 出所:BNPパリバ・アセットマネジメント、2025年5月末現在…
05/06/26
金利見通し 中東紛争の勃発以来、債券のパフォーマンスはデュレーションと逆相関となっています。デュレーションが短い債券に加えて、利回り水準が高い債券、そしてインフレ連動債が良好なリターンを示しています。また、米国債券は満期やクレジットの種類を問わず、総じて好調なパフォーマンスを示す傾向にあるようです。これは、米国の利回りが欧州よりも高く、インフレや政策金利への影響が限定的であると予想されているためでしょう。インフレ、金利、財政をめぐるリスクが継続する限り、こうした傾向は続くとみられます。4 月の政策金利は据え置かれたものの、ユーロ圏と英国では引き続き利上げのリスクが残されています。 一方で市場では、米国の政策金利は年内は据え置かれると予想されています。当面は、市場構造的にデュレーションが短く、インカム収入がトータルリターンに大きく寄与する米国ハイイールド債が選好されると見込まれます。2 月 27 日から 5 月 1 日までのICE BofA米ハイイールド指数のインカムリターンは1.2%で、欧州ハイイールド債が0.9%で、米国債(満期 1 年~ 3 年)の0.52%を上回りました。長期債のパフォーマンス改善には、イラン紛争の終結、エネルギー価格の下落、そして金利見通しの転換が必要となりそうです。 選別的なスタンス 株価指数と原油価格の相関関係は、最近になって一部で崩れつつあります。4 月末時点でブレント原油が過去数週間で 20%程度上昇した間、世界の株式指数はほぼ横ばいでした。しかし、注目すべき乖離がいくつかみられます。まず、米国と欧州における乖離です。米国の株価上昇は、好調な経済指標と堅調な決算発表によって支えられています。S&P500指数の構成銘柄のうち、執筆時点で決算発表を行っている企業の…
07/05/26
世界の主要な債券市場は3月、中東情勢によるインフレ懸念によって市場金利が大幅に上昇し、苦しい相場となりました。 この市場金利上昇は、中東での戦争の影響でエネルギー価格が急騰したことが引き金となり、中東からの石油・ガスの貿易の流れがほぼ停止したことが原因です。 この状況によって、市場ではインフレ懸念がさらに強まっています。もし戦争が長引けば、時間が経つにつれて世界経済や物価の安定が揺らぎ、スタグフレーション(インフレ加速と経済停滞の同時進行)のリスクが高まる可能性があるとみています。 低成長と高インフレの組み合わせは、先進国では起きることは稀ですが、起これば厄介な経験となります。というのも、経済成長が弱いと、通常であれば需要が低迷し、労働市場も脆弱であるため、物価上昇が抑えられるからです。 最近(執筆時)では、市場は2026年に主要な中央銀行が利下げではなく、利上げすると予想しています。つまり、市場では、中央銀行が金利を引き下げるのではなく、インフレを抑制するために利上げを行うと予想する向きが急速に増え、その結果、短期債券市場は3月の市場価格下落の矢面に立たされました。図表1は、3月の米国、ユーロ圏、英国の主要な債券利回りの変化を示しています。 しかし、インフレ連動債市場への投資は資産を保護する可能性を提供するとみている インフレ加速は、従来型債券市場には重しとなる傾向があり、固定金利名目債券の利回りは物価上昇とは相関しません。この債券保有者は、当初に決められたクーポンを継続して受け取りますが、その実質価値は、インフレ率が上昇して実質リターンが圧縮されるために、減少していきます。 これに対し、インフレ連動債では、債券保有者に支払われるキャッシュフローが物価上昇を反映して調整されるため、投資家がインフレに先んじて対応できるようになっています。インフレ連動債の元本は、食品やエネルギーを含む物価指数に日々連動し、恩恵を受けます。物価が増加している場合、この日々の連動係数による元本の調整により、元本とクーポンは時間とともに増加します。時間の経過とともに、元本は係数として適応されるインフレ率と同じ割合で増加します。 消費者物価指数は時間とともに徐々に反映します。つまり、現在のような非常に変動の激しい環境では、インフレ連動債市場のリターンは主に実質金利の動きによって左右されます。 しかし、短期償還のインフレ連動債(1年から5年の満期)市場に焦点を当てることによって、投資家は実質金利の変動によるリターンへの影響を制限して、主として消費者物価指数の恩恵を受けることができると考えています。 ブレークイーブン・インフレ(市場の期待インフレ率)に関心があるなら、実現インフレにも注目が必要 3月の短期インフレ連動債市場のパフォーマンスは、投資家をインフレショックから守る能力を示しています。ブレークイーブン・インフレ率は+1.15%のパフォーマンスを記録し、短期インフレ連動債市場のパフォーマンスは+0.05%(3月30日現在の月初来)に対し、短期名目債市場のパフォーマンスは-0.89%となっています。1BNPパリバ・アセットマネジメント(以下、BNPPAM)は、短期インフレ連動債市場の見通しに対して引き続き前向きな見解を持っています。BNPPAMの見解では、ブレークイーブン・インフレ率は現在、短期的なエネルギー価格の上昇を十分に織り込んでおり、その結果、年内のインフレ率の上昇も織り込んでいます。 この状態では、今後ブレークイーブン・インフレ率がさらに上昇するためには、エネルギー価格が現在の水準からさらに持続的に上昇するか、あるいはインフレに関する他のショック(関税、サプライチェーンの混乱、賃金上昇など)が必要でしょう。 そのようなショックは、船舶のホルムズ海峡航行に対する厳しい阻害が長引くという好ましくないシナリオから生じる可能性があります。例えば、化石燃料(石油とガス)の価格は非常に高い水準に維持される場合です。現在の市場予想では、2026年には平均で1バレルあたり100ドル程度となり、その後2027年には約80ドルに下落すると見られています。 好ましくないシナリオでは、特に冬前の備蓄期間において、ヨーロッパのガス供給が継続的にひっ迫することになります。現在の予想では、ガス価格は2026年には平均で1メガワット時あたり約70ユーロ、2027年には約61ユーロに達すると見込まれます。さらに、ホルムズ海峡の緊張から派生する二次的な影響として、肥料価格の上昇(これが食品インフレの上昇につながる)や、ヘリウムなどのガス副産物の供給不足も考えられます。 市場のインフレ期待をどのように債券市場の価格に適正に織り込むかを見ると、BNPPAMでは、短期インフレ連動債市場のパフォーマンスの主な源泉が、実現インフレにさらに強く依存していると考えています。最近のエネルギーショックとそれに伴う価格上昇は、消費者物価指数から得られるインカムの増加に反映されるでしょう。 以下のグラフに示されているように、現状の市場環境では、今年の4月から年末までの間、短期インフレ連動債市場のインカムは、主に消費者物価指数による元本調整によって、3%から3.5%の範囲になると見込んでいます。 BNPPAMは、今後数ヶ月の消費者物価指数の上昇によって、2022年に起きたような、実質金利の大幅な上昇に対して十分な保護を得られると考えています。2022年当時、インフレショック及び中央銀行による金融引き締めが避けられないとの懸念があったように、今日の環境といくつかの類似点があります。 スタグフレーションに向かって進行 中東の緊張は、深刻な供給ショックを引き起こしていますが、先進国全体の成長余力が鈍化し始めた時期であったために、インフレリスクをさらに高めています。経済活動状況を示す指標等は、すでに需要の減退と労働市場の軟化を示していました。その結果、マクロ経済環境は、経済成長の鈍化と持続的なインフレ圧力というスタグフレーション的な様相を見せてきています。…
31/03/26