- 欧州市場における乖離
- 債券利回りの上昇
- AIと生産性の関係
選別が求められる欧州株
市場では、米国とイランの紛争によって引き起こされたエネルギー・ショックは、米国よりも欧州の方が深刻との見方が優勢です。米国がエネルギー輸出国であるのに対し、欧州はエネルギー輸入国だからという理由です。たしかにGDPの観点からは正しいかもしれませんが、企業や個人にとって、コストの高くなったエネルギーが輸入されたものであるか、国内で生産されたものであるかはあまり重要ではありません。
それにもかかわらず、欧州経済は米国よりも悪い状況にあるように見えます。欧州の購買担当者景気指数が、サービス業と製造業の両部門で悪化を示した一方、米国では企業活動が活性化しています。株式市場も同様の傾向を示しており、MSCI欧州株指数が5月末時点でイラン紛争開始前の水準と比較してマイナス圏となる一方、S&P500指数は10%程度上昇しています(執筆時点)。ただし、この差は、主にテクノロジー株の力強いリターンがもたらしたものでした。テクノロジー株を除いても、欧州は若干アンダーパフォームしているものの、その差は限定的です。欧州連合(EU)の「戦略的自立」1の取り組みによって恩恵を受けると予想される欧州企業だけを見ると、その差はほとんどなくなります。2026年の欧州株投資での成功は、銘柄の選別がカギとなるでしょう。
長期金利に関する考察
長期国債の利回りは、世界的なパンデミックからの正常化の過程で、大幅に上昇してきました。例えば、米30年債の利回りは2021年末から約3%程度の上昇となっています。日本国債もドイツ国債も同様の上昇を示したほか、英国債は4%超の上昇と際立っています。長期金利に影響を与える要因については、バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が行った2013年の講演が有名ですが、その時期と比べると、長期の経済成長率、期待インフレ率・実質利回りのいずれも上昇していると考えられます。さらに、債券価格の変動性の高まりや株式・債券間の正相関によってタームプレミアム(期間プレミアム:期間の長さに伴って求められる上乗せ利回り)の上昇も見られました。
景気循環の要因に加えて、中央銀行が資産購入プログラムを縮小し、債券発行の拡大にそなえて投資家が警戒感を強めていることから、債券の需給バランスが崩れつつあるようです。国際通貨基金(IMF)の見通しでは、先進国のGDPに対する財政赤字は今後5年間で平均4.6%に達し、GDP比の債務残高は2025年末の108%から115%程度に上昇することが見込まれています。このように債券はまさに転換期を迎えており、戦略的な資産配分における国債と社債の相対的価値も変化していることに留意する必要があります。
AIと生産性に関する議論
サンフランシスコ連邦準備銀行(連銀)による最新の「エコノミック・レター」では、人工知能(AI)と生産性に関して繰り返される疑問について取り上げています。米国経済はAI投資によって、生産性の上昇を伴う成長時代に入ったのか、という質問ですが、生産性の測定が本質的に難しいこともあり、答えは単純ではありません。 労働生産性(労働時間1単位当たりの生産高)は近年急上昇しましたが、全要素生産性(TFP)は、経済全体の効率向上を反映するものであり、新しいテクノロジーが労働生産性を向上させたという事実だけを反映しているわけではありません。サンフランシスコ連銀の最新の推計によると、TFPの伸びは労働生産性の伸びに大きく遅れをとっており、最近のAIの伸びは根本的な効率性の改善というよりも、むしろ既存ツールの利用強化に起因していることを示唆しています。
生産性は学術的な議論だけでなく、経済政策にとっても重要です。ウォーシュ新FRB議長は、AIは大きな生産性向上をもたらすとの見方を示し、このテクノロジーによって「構造的なディスインフレ」につながると考えているようです。その根底にあるのは、潜在成長率が高まればインフレ目標の範囲内でも経済成長を加速させることができる、というものです。それでもサンフランシスコ連銀は、生産性の上昇を伴う成長時代に入ったと断言するのは時期尚早であると結論づけています。1990年代初頭のテクノロジーブームよりも希望は持てるものの、まだ確証はないということでしょう。
資産クラス別概要
表明された見解は、資産クラスのリターンおよびリスクに関する BNPP AMの予想を反映しています。各色は長期的に観測される動向と比較した今後3~6か月のリターンの見通しを示しています。
当市場見通しは、BNPP AMの予想を示したものであり、資産配分を含む投資に関する推奨や助言を意図したものではありません。
| 金利 | ||
| 米国債 | = | ケビン・ウォーシュの FRB議長就任で金利低下の期待が高まるが、財政悪化の見通しから長期金利上昇リスクも |
| ユーロ – 中核国国債 | = | ECB が年内 2 回の利上げを織り込む中、利回りは高水準で安定している |
| ユーロ – 周辺国国債 | = | イラン危機への財政対応はこれまでのところ限定的で、イタリアとスペインの財政状態は 2022 年よりも良好とみられる |
| 英国債 | + | 行き過ぎたインフレと財政懸念から、低迷が続く。政治的リスクによって長期債利回りは高止まりする可能性があるが、市場の金利上昇予想は行き過ぎている |
| 日本国債 | = | 日銀は危機的環境下での利上げには慎重な姿勢 |
| インフレ連動債 | + | インフレ連動債のキャリーは夏まで上昇し、短期債戦略が有効な可能性 |
| クレジット | ||
| 米ドル投資適格債 | = | スプレッドはイラン危機前より拡大したが、金利と成長リスクの影響を受ける。短期社債を選好する |
| ユーロ投資適格債 | = | 利回りへの需要がテクニカル面で後押ししているが、スプレッドの縮小に伴い相対価値は再び悪化 |
| 英ポンド投資適格債 | + | 長期投資家にとって魅力的な利回りだが、英国債が依然としてボラティリティを高める要因に |
| 米ドルハイイールド | + | 市場はソフトウェア・エクスポージャーに対する懸念を払拭し、魅力的な利回りに |
| ユーロハイイールド | + | 6% 近い利回りは、投資適格債に対して魅力的な相対的価値を提供 |
| 新興国ハードカレンシー | = | 3 月以降堅調なパフォーマンスと魅力的な利回りが続いているが、マクロリスクは残る |
| 新興国現地通貨 | + | エネルギー見通しが明確になれば、現地通貨は金利引き下げの余地がある |
| 株式 | ||
| 米国 | + | 米国株におけるAI関連のモメンタムは力強く、かつ加速しているが、根底にあるファンダメンタルズは引き続き構造的な投資事例を正当化している |
| ユーロ圏 | + | 石油・ガス価格の高騰は依然として成長への逆風である。欧州では、銀行、電化、防衛関連銘柄に注目 |
| 英国 | = | 金利上昇は引き続き経済成長の減速要因に。ディフェンシブ・セクターは相対的に堅調に推移 |
| 日本 | = | 財政拡大が内需セクターを支える。日銀が再利上げに踏み切る可能性が高まっていることから、銀行株は引き続き魅力的な投資対象に |
| 中国 | = | 米中デカップリングがテクノロジー株を支える。当局の戦略的産業において、的を絞った景気刺激策が実施される可能性がある |
| グローバル新興国市場 | + | テクノロジーや素材セクターの業績は好調。中東情勢の緊迫化がエネルギー輸入国であるアジア諸国の経済に重くのしかかるため、選別的な投資が重要に |
| 投資テーマ* | + | AI ハードウェア、スマートグリッド、炭素移行戦略が長期的に有望 |
* BNPP AMでは、企業が活用している6つのメガトレンドを特定しました。これらは、進化する世界経済を乗り切って行くのに最適な位置にあると考えるものです:自動化とデジタル化、消費者の傾向と長寿化、エネルギー転換、生物多様性、自然資本
出所:BNPパリバ・アセットマネジメント、2025年5月末現在
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
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[1] 出所:EU strategic autonomy 2013-2023:From concept to capacity | Think Tank | European Parliament