AIの収益化:イノベーションの推進と多様な投資機会の創出

By BNP Paribas Asset Management Chief Market Strategist, Daniel Morris, and co-Head, Environmental Strategies Group, Edward Lees  

  • インフラや技術への世界的な巨額の投資を背景に、AIはあらゆる産業において大幅なコスト削減と収益創出を可能にする原動力となりつつある
  • その継続的な進化により勝者と敗者が生まれることが予想される ― 投資家は、AIを事業に統合することが可能で、耐性と適応力のある企業を見極めることが不可欠
  • 今後10年間は戦略的かつ責任あるアプローチをとれば、前例のないイノベーションがもたらされ、長期的な投資リターンが期待される

人工知能(AI)は実験段階から大規模な導入段階へと移行し、より幅広い産業において、具体的な収益を生み出す原動力となっています。

AIモデルの性能が向上するにつれ、より多くの企業や産業でAI導入が進み、新たな価値の創出や収益の拡大が見られるようになっています。そしてAIは経済の様々な分野に、さらに広く浸透する潜在性をもつと考えられます。

例えば物流企業は、AIを活用してルートの最適化を行うことで、大幅なコスト削減が見込めます。農家はAIを活用したシステムを用いて除草剤を的確に散布することで、運営コストの削減とともに環境汚染を軽減することも可能です。

公益セクターではAIを活用した予知保全を行い、ダウンタイムを削減できる一方、再生可能エネルギーのプロジェクトでは、AIを用いて気象パターンを分析し、発電量を最大化しています。また、医療関連企業はAIを活用して新薬の開発を進めることで、新薬の発見を促進し、人命を救う可能性のある治療の市場投入までの期間を短縮することも期待されます。

設備投資の需要が急増

しかしAIの開発には多額の投資とインフラが必要となります。最近の推計によると、米国の主要なハイパースケーラー(大規模なクラウド事業者)によるAIおよびインフラへの投資は、2026年に約7,850億ドル、2027年には1兆ドル近くに達する見通しです。1

別の調査では、2028年までに世界全体でAI関連のインフラ投資額が3兆ドル近くに達するとも予測されています2

投資収益はAIが測定可能な価値を生み出せるかどうかにかかっています。収益化の勢いは増していますが、各産業でその効果が現れるまでには時間がかかるでしょう。

コンサルティング会社デロイトが2025年に実施した調査によると、約85%の企業が過去12カ月間にAIへの投資額を増加させました。ただし、回答者の大半は2~4年以内に満足のいく投資収益率を見込んでいるとしており、これはテクノロジーへの投資において一般的に期待される7~12カ月という期間よりも長くなっています3

ハイパースケーラー各社にとって、見通しはより不透明です。電力や半導体チップなどあらゆる要素を必要とするAIインフラの構築に対する多額の設備投資には、利用コストの低下によって将来的に普及が進むとの予想の下で、それに見合う十分な投資リターンが必要となります。

勝者と敗者

AIの導入が、勝者と敗者を生み出すことになるのは疑いの余地がありません。AIの能力を積極的に活用する企業は、効率の向上、事業の拡大、業績の改善を図ることができる一方で、対応が遅れた競合他社は取り残される可能性があります。

テクノロジー業界においても、先行する企業と出遅れる企業が出てくるでしょう。AIによる創造的破壊への懸念によって最初に打撃を受けたのはソフトウェア業界でしたが、企業の中核事業に不可欠なシステム、いわゆる「ミッションクリティカル」なソフトウェアを開発するプロバイダーは、AIの活用によってその提供サービスが強化され、今後発展していく可能性が高いと私たちは考えています。

逆に従来のソフトウェア企業は、参入障壁の低下に適応できなければ、困難に直面し、さらには時代に取り残される可能性もあります。

現在、ハードウェア企業、とりわけ半導体を供給する企業は、需要の急増の恩恵を受けています。しかし場合によっては、利益率が圧迫され始める可能性もあります。投資家は、AIを事業に統合することが可能で、耐性と適応力のある企業を見極めることが不可欠になると思われます。

AIインフラの拡大は電力需要の急増も招いていますが、この成長を維持するためには、さらに安価で容易に入手可能な再生可能エネルギーが不可欠であると同時に、蓄電池や電力網のイノベーションも重要になります。これらの分野の企業や、エネルギーインフラ向けの部品を供給する企業は、長期にわたる底堅い需要の恩恵を受けるため、新たな投資機会が生まれてくることも期待されます。

AIの主権争いがけん引役に

各国がAIの戦略的重要性を認識するにつれ、AI主権をめぐる議論がますます注目を集めています。各国が自国のデータ、ハードウェア、ソフトウェアを管理しようとしていることから、世界のテクノロジー市場が地域ごとのブロックに分断する可能性があり、その結果、コストの増加やイノベーションの鈍化を招く恐れがあります。

投資家にとって、こうした地政学的状況を乗り切るには、各地域の政策や国境を越えた協力の可能性を理解することが必要となります。グローバルに事業を展開し、柔軟な戦略を持つ企業こそが、規制環境の変化の中でも成功を収めるためにより有利な立場にある可能性があるとみています。

AIによる業務の自動化は、雇用の喪失に関する懸念も引き起こしています。しかし長期的な技術革新は、新たな業務や新たな産業を生み出す可能性もあると考えます。同時に、AIが人間の能力を強化し、労働者はより付加価値の高い業務に集中できるようになるかも知れません。

政策立案者とAI企業は、再スキル化、透明性、責任ある導入を推進するために協力し、社会の混乱を最小限に抑え、人々も企業もAIの可能性から恩恵を受けられるようにしなければなりません。

AIの未来

AIはすでにチャットベースのシステムから、複雑なタスクを独立して遂行できる自立型エージェントへと進化しつつあります。この進化が加速するにつれて、科学研究からロボット工学のようなフィジカルAIへの応用に至るまで、幅広い分野で画期的な進展がもたらされると考えています。

AIシステムがより主体性を持ち、自己改善能力を備えるようになれば、イノベーションのペースはさらに加速するでしょう。しかしこのことは、技術の進歩とエネルギー効率、セキュリティ、そして倫理的配慮とのバランスを図る、責任あるAIガバナンスの重要性を浮き彫りにしています。

AIは巨額投資と産業界における画期的な応用に後押しされて、すでに具体的な収益が見え始めています。投資家は、耐性のある企業を見極め、変化し続ける環境を把握し、地政学的に難しい状況を切り抜けることで、潜在的な投資機会を享受することができるでしょう。

今後10年間、戦略的かつ責任あるアプローチをとれば、かつてないほどのイノベーションが期待され、長期的な投資リターンが得られる可能性を秘めていると思われます。

[1] Moody’s: Hyperscaler capex forecasts marked up by $85bn, to close in on $1trn by 2027 Data Centre Dynamics  

[2] AI Market Trends 2026: Global Investment, Risks, and Buildout | Morgan Stanley

[3] AI ROI: The paradox of rising investment and elusive returns

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