- 英首相交代へ
- 堅調な業績と市場の懸念
- ECBの慎重な姿勢
英首相交代へ
英国の投資家は、首相交代という新たな課題に直面しています。これはまた、英国経済の成長促進や英国内の地域間格差の是正に重点を置いた経済政策への転換を示唆している可能性があります。スターマー首相の後継候補であるアンディ・バーナム氏は、英政府の財政ルールを重視することを約束しています。英国債に対する市場の信用度は、経済の安定を支える重要な柱となりますが、首相の辞任以来、英国債利回りは低下しています。市場の安定にとっては、閣僚人事(とりわけ財務相の人選)とバーナム氏の政策課題の策定という2つの動きが極めて重要となるでしょう。
成長促進策の一環としてインフラ投資を拡大するにあたり、財政ルールに則った借入の範囲内に収めることができるかどうかが、極めて重要となります。現在の英国債利回りは、英イングランド銀行(中銀)が利上げを見送る姿勢を示していることを考慮すると、魅力的な水準に見えます。英国の株式市場も、首相交代による政策の転換から恩恵を受ける可能性があります。ブレグジット(英国のEU離脱)の国民投票から10年を迎え、この間に英国が被った経済的損失に関する分析が行われる一方、英FTSE 350指数の直近12カ月の株価収益率(PER)は、S&P 500指数の60%程度にとどまっており、2010年以降の平均水準も下回っています。成長見通しの改善があれば、英国の投資家にとって好材料となる可能性がありそうです。
堅調な業績、先行きが不透明な市場
原油価格は6月のピーク時から約30%下落したにもかかわらず、株式市場にはほとんど安心感が見られません。株価のバリュエーションや業績見通しへの懸念が再燃したことから、テクノロジー株式は再びボラティリティが高まっています。経済指標は総じて好調ですが、非テクノロジー関連の株価指数は小幅な上昇にとどまっています。米国の労働市場では3カ月連続で着実な雇用拡大が続いているほか、購買担当者景気指数(PMI)は、米国、欧州、日本における製造業活動の堅調さと、米国および日本におけるサービス業の拡大を示しています。
それでも株式市場が慎重な姿勢を見せている理由の1つは、中東情勢をめぐる不透明感が依然としてくすぶっていることです。また、もう1つの理由としては、(実質)金利の上昇が見込まれている点です。欧州中央銀行(ECB)はすでにインフレ懸念を理由に利上げを実施してしており、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ新議長も、物価安定の実現に意欲を見せています。とはいえ、企業の利益見通しは明るいと言えます。4-6月期の利益成長率に関する市場予想は、MSCI欧州株指数が12%増、ラッセル・バリュー指数が17%増、ナスダック総合指数が30%増となっています。さらに、新興国市場におけるテクノロジー企業の利益は138%増加すると見込まれています(韓国では840%の増益見通し)1。こうした力強い利益の伸びは、今後も引き続き株式市場を下支えすることが予想されます。
ECB:利上げの緊急性はない
2026年の金融政策に対する市場関係者の見通しは、原油価格の急騰を受けて大きく変化しました。2025年末時点では、ECBは2026年を通じて政策金利を据え置くとの見方が中心となっていました。しかし、ECBの6月会合での0.25%の利上げを受け、最近では年末までにさらに1回以上の利上げが行われるとの見方が強まっています。こうした予想は、原油価格が1バレルあたり80ドルを下回る状況になっても、その見方は大きく変わっていないようです。この原油価格の水準は、ユーロシステム当局者が「より穏やかな」予測シナリオで示した水準を10%近く下回っています2。
原油価格の急騰がエネルギー以外の商品やサービス分野にも波及していることが確認されるまで、市場の利上げ観測と変動の激しい原油価格との間で起きている乖離は、継続することも予想されます。ECBは、最終的には「正常化」のシナリオを支持し、利上げを温存しつつ、さらなる情報を待つことになるかもしれません。その後、ECB自身が認めている通り(そして私たちの金利予測モデルでも裏付けられているように)、中立金利はわずかに上昇している可能性もありますが、その水準に向けて再び調整を行うことになるとみています。その結果、マネーマーケット金利の低下、国債イールドカーブの若干のスティープ化(右上がりになること)、そして全体として金融環境の緩和が見込まれます。
投資アイデア – 米国および新興国におけるディスラプティブ(創造的破壊)・テクノロジー戦略
根拠: AIブームは、グローバル経済全体に革新的で有益な新製品やサービスを提供するとともに、事業活動や雇用体系を変革する力を秘めています。より強力なアプリケーションが開発されるにつれて、AIインフラ、バリューチェーン、ソフトウェア・アプリケーションへの投資機会はより多く創出されることになるでしょう。このテクノロジーの未知なる可能性は、引き続き強力な設備投資と潜在的なリターン機会の創出を下支えすると思われます。
投資アイデア – 欧州株式
根拠: 欧州の経済的自立の達成に向けた戦略的な重点分野が、引き続き2026年の欧州株式の投資機会のサポート材料となるでしょう。防衛やデジタルインフラ、グリーンテクノロジーへの支出が欧州全域で優先され、長期にわたって欧州主要国や欧州連合(EU)全体の取り組みからも恩恵を受けると予想されます。この影響は多くのセクターに波及することも期待されます。欧州株式は米国や日本よりも低いバリュエーションで取引されているため、欧州株式の潜在的な投資機会は多いとみています。
投資アイデア – 米国ハイイールド債
グレジット市場の投資環境は引き続き良好です。世界経済の成長はエネルギーショックに対して耐性を示し、企業収益も堅調さを維持しています。金利の上昇により利回りが上昇し、インフレ率は2.0%を上回って推移していることから、米FRBによる年内の利下げの可能性はほぼなくなったとみられます。これにより、クレジット市場の利回りは魅力的な水準で推移する見込みです。投資適格社債の発行が増加している一方で、ハイイールド債市場は、信用力の向上や、テクニカル面およびキャッシュフロー面での好材料により、引き続き恩恵を受けています。7%を超えるハイイールド債の利回りは魅力的であり、2026年上半期の米国ハイイールド債のインカム収益は3%程度となっています。この市場セグメントでは、厳選された銘柄選択とレバレッジの適切な活用により、指数に対してトータルリターンをさらに向上させる可能性もあると思われます。
資産クラス別概要
表明された見解は、資産クラスのリターンおよびリスクに関する BNPP AMの予想を反映しています。各色は長期的に観測される動向と比較した今後3~6か月のリターンの見通しを示しています。
当市場見通しは、BNPP AMの予想を示したものであり、資産配分を含む投資に関する推奨や助言を意図したものではありません。
| 金利 | ||
| 米国債 | = | ケビン・ウォーシュの FRB議長就任で金利低下の期待が高まるが、財政悪化の見通しから長期金利上昇リスクも |
| ユーロ – 中核国国債 | = | ECB が年内 2 回の利上げを織り込む中、利回りは高水準で安定している |
| ユーロ – 周辺国国債 | = | イラン危機への財政対応はこれまでのところ限定的で、イタリアとスペインの財政状態は 2022 年よりも良好とみられる |
| 英国債 | + | 行き過ぎたインフレと財政懸念から、低迷が続く。政治的リスクによって長期債利回りは高止まりする可能性があるが、市場の金利上昇予想は行き過ぎている |
| 日本国債 | = | 日銀は危機的環境下での利上げには慎重な姿勢 |
| インフレ連動債 | + | インフレ連動債のキャリーは夏まで上昇し、短期債戦略が有効な可能性 |
| クレジット | ||
| 米ドル投資適格債 | = | スプレッドはイラン危機前より拡大したが、金利と成長リスクの影響を受ける。短期社債を選好する |
| ユーロ投資適格債 | = | 利回りへの需要がテクニカル面で後押ししているが、スプレッドの縮小に伴い相対価値は再び悪化 |
| 英ポンド投資適格債 | + | 長期投資家にとって魅力的な利回りだが、英国債が依然としてボラティリティを高める要因に |
| 米ドルハイイールド | + | 市場はソフトウェア・エクスポージャーに対する懸念を払拭し、魅力的な利回りに |
| ユーロハイイールド | + | 6% 近い利回りは、投資適格債に対して魅力的な相対的価値を提供 |
| 新興国ハードカレンシー | = | 3 月以降堅調なパフォーマンスと魅力的な利回りが続いているが、マクロリスクは残る |
| 新興国現地通貨 | + | エネルギー見通しが明確になれば、現地通貨は金利引き下げの余地がある |
| 株式 | ||
| 米国 | + | エネルギー価格の下落と長期金利の低下により、株価の上昇余地が生まれる一方、超大型のテクノロジー株は引き続き力強さを維持 |
| ユーロ圏 | + | エネルギー価格の下落、適正な株価評価(バリュエーション)に加え、予想を上回る好業績の可能性。銀行セクター、電化関連、そしてスペインとイタリアの株式を選好 |
| 英国 | = | 金利上昇は引き続き経済成長の減速要因に。ディフェンシブ・セクターは相対的に堅調に推移 |
| 日本 | = | 財政拡大は内需関連セクターを下支えするとみられるが、バリュエーションはやや割高で、利益見通しには勢いが欠ける |
| 中国 | – | 中国の経済成長は引き続き低調。戦略的産業に的を絞った景気刺激策が講じられる可能性は高まっているものの、具体的な措置が打ち出されるのを待って再評価の予定 |
| グローバル新興国市場 | = | 半導体関連銘柄の収益は引き続き堅調で、韓国・台湾株に恩恵をもたらしているが、高水準の借入によって調整局面に入るリスクも |
| 投資テーマ* | + | AI ハードウェア、スマートグリッド、炭素移行戦略が長期的に有望 |
* BNPP AMでは、企業が活用している6つのメガトレンドを特定しました。これらは、進化する世界経済を乗り切って行くのに最適な位置にあると考えるものです:自動化とデジタル化、消費者の傾向と長寿化、エネルギー転換、生物多様性、自然資本
出所:BNPパリバ・アセットマネジメント、2026年6月末現在
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
※本資料中の指数等の著作権、知的財産権、その他一切の権利はその発行者に帰属します。
[1] 出所:FactSet
[2] Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area, June 2026