By Chris Iggo, アクサIM 資産運用研究所議長、アクサIM コア CIO、BNPパリバ・アセットマネジメント(以下、BNPPAM); Daniel Morris, BNPPAM チーフ・マーケット・ストラテジスト株式部門; Chi Lo, シニア・エコノミスト、BNPPAM
- 市場の流れに対する抵抗力の構築
- 石油だけではない
- 中国の潜在成長力を開放
金利予想の変化
中東紛争に起因するインフレ率上昇の見通しは、金利予想を変化させ、その結果、債券市場のリターンは低下しています。短期のインフレ連動債市場は、金利変動への感応度が低く、リターンの大部分が実際のインフレ率から得られるため、インフレ率上昇や短期金利の上昇に対する一定の防御策となるとみています。そのため、投資家は通常、従来型債券への投資戦略よりもドローダウン(下落率)が小さく、このことはここ数週間の状況にその傾向が見られました。
短期金利が上昇している時、マネーマーケットや変動金利証券も一定の防御策となる可能性があると考えます。これらのキャッシュ相当資産は、投資家に対して短期的には相対的に高い安全性をもたらす可能性があり、今後、価格の下がったリスク性資産に投資するための資金として活用することもできるでしょう。紛争が長期化すれば、インフレと成長の見通しが悪化し、金利の変動が続くことになるでしょう。しかし、社債などのクレジット市場は、スプレッドが拡大し、利回りが2025年第2四半期以来の高水準にあるため、緊張が緩和する場合には、良好な投資機会が現れるとみています。このシナリオでは、中央銀行が金融政策を引き締める必要性も弱まり、短期金利の市場予想値が低下するため、短期債券市場のリターンを押し上げる可能性があるでしょう。
石油以外の要因
2月28日に中東紛争が勃発して1ヵ月の3月末までに、世界の株式市場(MSCI ACWI指数米ドル建て)はトータルリターンで約7%下落しました。資本財など石油価格に敏感なセクターが下落の大きな要因となり、石油関連セクターは上昇したものの、市場の下落全体を補うことはできませんでした。しかし、2月に上昇相場を牽引したセクターほど、3月の下落相場に与える影響が大きくなりました。金融セクターは、市場でプライベート・クレジットに対する懸念が続いていることもあり、3月の市場下落の最大の要因となりました。一方、テクノロジー関連のハードウェアや半導体セクターは、2月に上昇した分の多くを失いました。
その後、交渉による戦争終結への期待から、株式市場は3月後半には小幅ながら反発を見せ、世界の債券市場(ブルームバーグ・マルチバース指数で測定)を上回るパフォーマンスを示しました。株式市場の反発を牽引したのは、資本財、半導体、金融セクターでした。BNPPAMは今後の見通しについて慎重な姿勢を続けていますが、株式市場におけるセクター動向から判断すると、投資家は長期的な視点でどのように投資すべきかを検討するにあたり、石油関連産業と同様に、人工知能(AI)関連産業にも引き続き注視する必要があるとみています。
中国の上昇余力
中東紛争勃発以来、中国の株式市場(MSCI中国指数)の3月のトータルリターン(米ドル建て)は、世界の株式市場を小幅下回ったものの、月中は上回って推移していました。また、CSI 300指数も、下落したものの世界の株式市場を上回りました。この市場の耐性にはいくつかの理由があるとみています。第一に、中国の石油依存度は他国に比べ低く、石油消費量(実質GDPに対する石油消費量の比率)は長年にわたって着実に低下しています。第二に、中国は豊富な石油在庫を保有しています。第三に、政府による小売エネルギー価格の統制とデフレ的な需要状況のため、原油価格の上昇が消費者に転嫁される余地が限られています。
インフレの影響は主に生産者物価指数(PPI)に現れるでしょうが、PPIは依然デフレ状態にあります。しかし、PPIは中国企業の収益と高い相関関係があるため、PPIの回復は企業の収益成長を押し上げると考えられます。中国経済が持続的にインフレ状況へと移行できれば、日本と同様に株式市場に上昇余地が見込まれます。BNPPAMの見解では、中国国内のA株市場は、政府によるファンド購入の可能性、豊富な流動性、そしてグローバル指数との相関性の低さから、香港や米国で取引されているA株よりも下落リスクに対する保護力が強いように考えられます。原油価格との関連の低さと、相対的に大きな経常収支黒字(GDPの2%)も為替レートを支えています。
出所:ブルームバーグ、BNPPAMグループ、2025年3月末現在
資産クラス別概要
表明された見解は、資産クラスのリターンおよびリスクに関する BNPP AMの予想を反映しています。各色は長期的に観測される動向と比較した今後3~6か月のリターンの見通しを示しています。
当市場見通しは、BNPP AMの予想を示したものであり、資産配分を含む投資に関する推奨や助言を意図したものではありません。
| 金利 | ||
| 米国債 | = | エネルギーショックがインフレや金利、潜在的な財政に与える影響により、国債利回りが上昇している。米連邦準備理事会(FRB)は様子見の姿勢を続けるとみている |
| ユーロ — 中核国国債 | – | 短期間にインフレが上昇すれば、欧州中央銀行(ECB)は利上げに向かう可能性があるだろう |
| ユーロ — 周辺国国債 | – | エネルギーショックは短期的に財政懸念を引き起こし、スプレッド拡大を促す可能性があるとみている |
| 英国債 | = | 割安ながら、利下げの先送りやインフレ上昇、財政懸念により、難しい局面を迎えるかもしれない |
| 日本国債 | = | エネルギーショックにより、市場の利上げ期待が強まるだろう |
| インフレ連動債 | + | インフレ率の上昇によって、インフレ連動債のリターンが支えられるとみている |
| クレジット | ||
| 米ドル投資適格債 | = | 投資見通しはニュートラルながら、スプレッドがさらに小幅に拡大するリスクがあるとみている |
| ユーロ投資適格債 | = | 楽観的な見通しは中東紛争の早期終結次第だが、スプレッド拡大のリスクがあるとみている |
| 英ポンド投資適格債 | = | 足元の金利上昇とスプレッド拡大によって、利回りには投資機会が現れてきたとみている |
| 米ドルハイイールド | = | プラスのリターンが見込まれるものの、人工知能やイラン情勢の展開には注意が必要であろう |
| ユーロハイイールド | = | 地政学的ニュースや欧州のインフレ懸念がスプレッドに引き続き影響を与えている |
| 新興国ハードカレンシー | = | パフォーマンスは底堅いものの、エネルギーショックを考慮して国別配分には選別が必要とみている |
| クレジット | ||
| 米ドル投資適格債 | = | 投資見通しはニュートラルながら、スプレッドがさらに小幅に拡大するリスクがあるとみている |
| ユーロ投資適格債 | = | 楽観的な見通しは中東紛争の早期終結次第だが、スプレッド拡大のリスクがあるとみている |
| 英ポンド投資適格債 | = | 足元の金利上昇とスプレッド拡大によって、利回りには投資機会が現れてきたとみている |
| 米ドルハイイールド | = | プラスのリターンが見込まれるものの、人工知能やイラン情勢の展開には注意が必要であろう |
| ユーロハイイールド | = | 地政学的ニュースや欧州のインフレ懸念がスプレッドに引き続き影響を与えている |
| 新興国ハードカレンシー | = | パフォーマンスは底堅いものの、エネルギーショックを考慮して国別配分には選別が必要とみている |
* BNPP AMでは、企業が活用している6つのメガトレンドを特定しました。これらは、進化する世界経済を乗り切って行くのに最適な位置にあると考えるものです:自動化とデジタル化、消費者の傾向と長寿化、エネルギー転換、生物多様性、自然資本
出所:BNPPAM
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
本資料で使用している指数について
- MSCI ACWI、及びMSCI中国指数:MSCI社が公表している先進国や新興国を含む世界の株式市場、及び中国の株式市場の値動きをそれぞれ示す時価総額加重平均型指数です。
- ブルームバーグ・マルチバース指数:ブルームバーグ社が公表している、世界の債券市場の様々なセクターや国、投資格付け、ハイイールドを含み網羅的に債券市場全体の値動きを示す指数です。
- CSI300指数:中証指数有限公司が算出・公表している、上海証券取引所および深セン証券取引所に上場されている全A株のうち時価総額および流動性の高い300銘柄で構成される浮動株時価総額加重平均指数です。
※本資料中の指数等の著作権、知的財産権、その他一切の権利はその発行者に帰属します。