半導体業界における水不足の解消

水を大量に消費する産業は現代経済に不可欠なものとなっていますが、革新的な技術によって環境に与えるインパクトを軽減することが可能です。ルクセンブルク籍「BNP パリバ・ファンド アクア」の運用担当者であるインパックス・アセットマネジメント、シニア・ポートフォリオマネジャーのジャスティン・ウインター(Justin Winter)が、半導体業界における水課題とそのソリューションについて解説します。

半導体チップは、クラウドコンピューティングの強化から車両システムの管理にいたるまで、現代経済にとって不可欠なものとなっています。しかしながら、半導体チップは生産プロセスで大量の水が必要となります。世界的な半導体製造が急速に拡大する中、そのプロセスにおいて水の使用量を削減することが、より持続可能で強靭な業界にしていく鍵となります。

半導体需要の増大に対応するため、またリショアリング(海外に移した生産拠点を自国に戻す)の傾向の一環として、半導体製造工場(いわゆる「ファブ」)の新設あるいは増設のための投資が急増しており、特定の戦略的産業に影響を与えています。 2017年から2020年にかけて年間平均930億ドルだった「ファブ」への世界の年間投資額は、2021年から2024年までに平均1,470億ドルになると予測されています(ブルームバーグ、バークレイズリサーチ(2023年)による)。

こうした投資ブームは、半導体チップの製造能力の向上につながり、ひいては半導体業界の水需要の増加にもつながります。世界の半導体業界は、毎年推定120万メガリットルの水を使用しています。半導体チップ内に配備されるシリコンウエハーの洗浄や清潔な環境維持には、大量の超純水が使用されます。

図表1 半導体チップと水需要

設備投資の増加により半導体製造が拡大し、水需要が増加している

廃水処理と再利用にさらなる投資

信頼性の高い水供給に加えて、潜在的なコスト削減の必要性が高まっていることで、半導体製造企業による廃水処理と再利用への投資が促進されています。その際、地域の環境問題への配慮も重要な要素となります。操業中や建設予定の工場の多くは、台湾や韓国、米国の一部など、水不足のリスクが高いエリアに位置しています。

例えば、半導体受託製造で世界最大手のTSMCは、アリゾナ州の新工場において、その水需要の65%に対応する水リサイクル施設を建設する予定です。同社は2030年までに、自社の事業全体における水の再利用率を2010年比で30%以上増加させることを目指しています。また、韓国の同業SKハイニックスは、2030年に2019年比で3倍以上の水の再利用を目指すことを明らかにしています。

革新的な技術によって、処理済みの廃水は半導体チップの製造プロセスで必要となる超純水を作りだすシステムへの給水に使えるようになります。廃水には除去するのが困難な多くの汚染物質が含まれています。この課題を解決するために、半導体工場では、製造工程全体の廃水をまとめて処理するのではなく、オーダーメイドの処理方法に合わせて廃水を分離して処理することが増えています。例えば、TSMCは38(2001年当時は10経路)に分割した排水経路のうち、13経路を対象としています。

求められる専門性の高いソリューション

より厳格な廃水処理が求められることによって、包括的な廃水のモニタリングに加えて、特定の成分に狙いを定めたデジタル分析ソリューションや特定のイオンの存在を検出できるセンサーなど、多くの投資機会が生まれています。

世界的に半導体生産が増加するにつれて、強靭なオペレーションとコスト削減を目指す半導体業界の水不足に対応し、工場における水リサイクルをより促す専門性の高いソリューションが求められています。

こうした技術は、特に水ストレスの高い地域において、水使用が環境に悪影響を及ぼすことを軽減し、重要かつ急成長を遂げている半導体産業がより持続可能な経済への移行に沿うことをサポートすることが可能です。

なお、世界の水関連セクターの成長性や規制関連の情報は、インパックス・アセットマネジメントのリサーチ「水への投資:世界的に不可欠な資源への投資機会」でもご確認頂けます。

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