Chris Iggo

Chris Iggo

アクサIM 資産運用研究所議長、アクサIM コア CIO、BNPパリバ・アセットマネジメント(以下、BNPPAM)

Bio

クリス・アイゴーは、コア・インベストメントの最高投資責任者(CIO)です。全資産クラスのポートフォリオ・マネージャーのために、リサーチ、クオンツラボ、責任投資の各チームのインサイトを結集しています。

以前は、 アクサIM 債券部門の CIOと、欧州およびアジアのアクティブ運用債券部門ヘッドを兼務。グローバルな運用プロセスを統括し、パフォーマンスおよび戦略・ファンド開発などを含め、欧州とアジアの全アクティブ運用チームのマネジメントを担当。

アクサIM入社当時はシニア・ストラテジストを務め、その後2008年に債券 CIO に就任。2014年に欧州およびアジアの債券部門ヘッドに就任。

アクサIM へ入社する前は、カザノブ・ファンド・マネジメントでストラテジーヘッドとして5年、バークレイズ・キャピタルに米国チーフ・エコノミスト (ニューヨークオフィス)および欧州チーフ・エコノミストとして4年在籍。それ以前は、チェース・マンハッタン銀行のロンドンおよびニューヨークのオフィスに7年勤務し、エコノミストや外国為替ストラテジストを歴任。ロンドン大学経済学修士号および学士号取得。

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月次市場見通し: 債券市場の回復力と株式市場における乖離

金利見通し 中東紛争の勃発以来、債券のパフォーマンスはデュレーションと逆相関となっています。デュレーションが短い債券に加えて、利回り水準が高い債券、そしてインフレ連動債が良好なリターンを示しています。また、米国債券は満期やクレジットの種類を問わず、総じて好調なパフォーマンスを示す傾向にあるようです。これは、米国の利回りが欧州よりも高く、インフレや政策金利への影響が限定的であると予想されているためでしょう。インフレ、金利、財政をめぐるリスクが継続する限り、こうした傾向は続くとみられます。4 月の政策金利は据え置かれたものの、ユーロ圏と英国では引き続き利上げのリスクが残されています。 一方で市場では、米国の政策金利は年内は据え置かれると予想されています。当面は、市場構造的にデュレーションが短く、インカム収入がトータルリターンに大きく寄与する米国ハイイールド債が選好されると見込まれます。2 月 27 日から 5 月 1 日までのICE BofA米ハイイールド指数のインカムリターンは1.2%で、欧州ハイイールド債が0.9%で、米国債(満期 1 年~ 3 年)の0.52%を上回りました。長期債のパフォーマンス改善には、イラン紛争の終結、エネルギー価格の下落、そして金利見通しの転換が必要となりそうです。 選別的なスタンス 株価指数と原油価格の相関関係は、最近になって一部で崩れつつあります。4 月末時点でブレント原油が過去数週間で 20%程度上昇した間、世界の株式指数はほぼ横ばいでした。しかし、注目すべき乖離がいくつかみられます。まず、米国と欧州における乖離です。米国の株価上昇は、好調な経済指標と堅調な決算発表によって支えられています。S&P500指数の構成銘柄のうち、執筆時点で決算発表を行っている企業の…

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AIが債券市場に与える影響力の拡大

人工知能(AI)をめぐる投資家の関心は株式市場に非常に集中しており、テクノロジー企業が中心となるナスダック総合指数は過去1年間で何度も史上最高値の更新を続けています。 しかしながら、債券市場もAIブームによって良い影響を受けつつあるようです。 投資家心理やAIがマクロ経済に及ぼす影響に加えて、AI技術が債券市場に影響を与える要因はいくつも存在します。 ここでは、成長するテクノロジー企業による債券の発行、発行体となる企業のビジネスモデルの変革、そしてAIの発展による投資プロセスの強化の可能性、という3つの論点について取り上げます。 債券の発行拡大 主要な株価指数において、テクノロジー企業に時価総額が集中していることはよく知られています。一方で、債券市場にはそういった集中は見られず、債券指数におけるテクノロジー企業のシェアは限定的なものにとどまっています。 ICEデータ・インデックス社が公表しているグローバル社債指数において、テクノロジーおよび電子機器セクターの占める比率は4.8%にとどまっています。テクノロジー分野での設備投資が市場の話題となる昨今の状況においても、その比率は数年前から大きく変わっていません。また、米投資適格社債の市場での比率は7%程度となっていますが、欧州ではこの比率はもっと低く、世界のハイイールド債市場でも5%程度にとどまっています。 しかし、債券の発行は増加傾向にあります。昨年、いわゆる「ハイパースケーラー」(大手のクラウドサービス事業者)が複数の大規模な債券発行を通じて、AIインフラの拡張を支援するため巨額の設備投資を行っています。 米国では、テクノロジーおよび電子機器セクターが発行した社債の金額は3月までの1年間で11%拡大し、約6850億ドルに達しました。企業側の見通しによれば、設備投資の増加に減速する兆しは見られず、今後も拡大する動きが続くと予想されています。 こうした資金調達の大部分は米国で行われていますが、発行体はユーロやポンドの投資適格市場にも参入しています。グーグルの親会社アルファベットは、今年2月に史上最大規模規模の債券発行を行い、この中には償還年限100年の社債(英ポンド建て、利率6.125%)も含まれています1。 それ以外の事例では、フェイスブックを運営するメタが昨年米国市場で300億ドルを調達したほか、米オラクルも多くの社債発行による資金調達を行っています2。 こうした巨大テクノロジー企業にとっては、好調な株価がクレジットの基盤となっているようです。これらの企業は力強い利益成長、堅実なバランスシートを持ちながら負債が限定的で、信用格付けが相対的に高い発行体と考えられます。テクノロジーセクターの拡大は、金融セクターや景気循環的な資本財・サービスセクターに偏りがちな債券指数の分散度を高めることから、投資家にとって歓迎すべきものです。 債券市場において、テーマ型投資はさほど一般的ではありませんが、クレジットの質や評価の高いテクノロジー企業の発行増加は、投資家の支持を得る可能性がありそうです。そのクーポンの水準は良好で、力強い利益成長に支えられています。投資家の多くはすでに株式保有を通じてテクノロジー企業を理解しているため、より予測可能なリターンをもたらすAIを推進する大手企業が発行する社債には、投資家の関心が集まることも予想されます。 債券における創造的破壊 AIがタスクの自動化や効率性の向上、プロセスの迅速化を通じてビジネスモデルを変革できるという根拠は多く存在しています。 2026年初めには、ソフトウェア企業、例えば顧客管理システムなどのアプリケーションプロバイダーが、AIによる迅速なコーディングや商品開発能力によって、ソフトウェア製品の価値が損なわれかねないとして、市場の注目が集まりました。テクノロジーのエコシステムは複雑ですが、小規模企業の方がこうした創造的破壊の影響を受けるリスクは高いかもしれません。実際に、この分野の中小企業にとって資金調達源となっている高利回りのレバレッジドローンやダイレクトレンディング市場でも懸念されていました。 すでに指摘した通り、債券市場は株式市場よりもセクターが分散されています。テクノロジーセクターは米ハイイールド債市場の約5%に過ぎず、ソフトウェアに限れば3.5%程度です。年初にソフトウェアサービスに対するAIの創造的破壊という懸念が浮上する中で、同セクターのスプレッド(信用格差による利回り差)は拡大しました。 しかしながら、AIによってビジネスモデルが脅威にさらされやすい発行体と、テクノロジーセクターに属するだけで影響を受けにくい発行体があるため、投資家はどの発行体が脆弱なのかを区別することが必要となります。ゲームやメディアといったセクターでも、AIによる創造的破壊の影響を受ける発行体はあるでしょう。だからこそ、アクティブ運用を行う債券投資家は、キャッシュフローが脅かされ、格付けが低下しデフォルトリスクが高まる可能性のある発行体を見極めることに重点を置かなければなりません。 繰り返しになりますが、同セクターへの懸念が行き過ぎる状況には注意が必要です。まだ比較的小さなセクターであり、すべてのテクノロジー企業がリスクを抱えているではありません。テクノロジーへのエクスポージャーは、レバレッジドローンやダイレクトレンディング市場により集中しており、公開市場におけるハイイールド債ではこうした集中はみられていません。 投資プロセスの強化…

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チップとオイル

韓国株は、半導体やその他のコンピューター・ハードウェア株を中心に急騰しています。米国では、テクノロジー企業の決算発表が好調で、ナスダック100指数は3月末以降、S&P500指数を5%上回って上昇しています(執筆時点)。 データセンターの容量増強におけるボトルネックを解消する新しい技術が、有望な投資テーマとして浮上しています。テクノロジーセクターの中では、インフラ整備やツール供給といった「土台」となる事業が依然として大きな存在感を示しているようです。 しかしながら、中東情勢の動向によっては、市場の上昇トレンドが反転する可能性も依然として存在していると思われます。エネルギー不足が経済活動や消費に及ぼす影響は、まだ最悪の事態を迎えていないのかもしれません。ホルムズ海峡における問題の解決は、投資家の信頼回復に不可欠です。そのため、米国とイランの協議の行方にすべての注目が集まっていますが、協議がいつ行われるかは、現時点では不透明な情勢です。 何にでも必要となる半導体チップ 2026年もほぼ3分の1が過ぎましたが、中東紛争にもかかわらず、株式市場のリターンはテクノロジー関連銘柄が引き続き牽引しています。韓国、台湾、日本、イスラエルといったテクノロジー主導型市場の目覚ましいパフォーマンスからもこうしたトレンドは明らかです。ナスダック100指数はアジア市場に比べて出遅れており、S&P500指数も同様に出遅れているものの、いずれも良好なリターンを記録しています。 「目覚ましい」と「良好な」との微妙な違いは、韓国や台湾の株式市場が半導体製造と関連銘柄が中心であるのに対して、米国市場にはソフトウェア企業がはるかに多く存在しているという点です。人工知能(AI)が「サービスとしてのソフトウェア」(SaaS: Software as a Service)のビジネスモデルを覆しかねず、それによってソフトウェア企業が中期的に大きな影響を受ける可能性があるという懸念があります。 ピック&シャベル戦略(金鉱を掘る人よりも道具を売っていた商人の方が儲けたという例え)を活用し、AIを支えるインフラやサービスを提供する企業に投資するトレードは引き続きうまく機能しています。足元で、台湾の半導体メーカーTSMCが売上高見通しを引き上げたほか、すでに1-3月期決算を発表したS&P500構成銘柄のテクノロジー企業はまだ多くないですが、とりわけ半導体分野で市場予想を大幅に上回る好決算が出てきています。 テクノロジーは引き続き世界の株式リターンをけん引する主要な原動力となっており、今年はこれまでのところ、半導体とアジア市場への投資が最も有効だったと言えます。 テクノロジー企業の受注残は豊富で、データセンターやコンピューター設備の拡張は減速の兆しを見せていません。しかし、サーバーの稼働や、拡大し続けるAI利用に伴うコンピューティング需要を満たすには、膨大なエネルギー、水、そして重要な金属資源が必要となります。こうした潜在的なボトルネックを解消する技術、例えば希少な水資源への負荷を軽減する高効率冷却技術などに、新たな投資機会が生まれているとみられます。 特に中東情勢を勘案すると、エネルギーの不足は、テクノロジー業界にとって潜在的な課題となるでしょう。原油と液化天然ガス(LNG)の両市場で、深刻な供給の問題が発生しています。テクノロジー企業が自社の発電設備に投資しているにもかかわらず、データセンターのコストは増加することが見込まれます。 活況を呈しているマーケット ただし、エネルギー危機がAI投資を失速させる可能性は低いと思われます。確かに課題ではありますが、再生可能エネルギーや原子力、水力、バイオマス発電などを通じた容量の増強によって、最終的にはエネルギー供給は回復し、さらに強化されるとみています。 コンピューティング能力の拡大、通信ネットワーク、発電、送電といった相互に関連するテーマは、今後しばらくの間は、投資戦略の中心テーマであり続けると予想されます。 今年の年初来で、S&P500の資本財・サービス指数で上位5位のリターンを記録した銘柄は、いずれも電力サービス・機器の提供に携わる企業です。 事態は長期化の見込み ニュースの見出しは、引き続き金融市場の変動要因となっています。ここ数週間で指摘してきたように、現在のマーケットでは平和的な解決が実現し、エネルギー市場が徐々に正常化することで、長期的な価格変動や石油・ガス製品に依存する経済活動への混乱が最小限に抑えられるという期待に基づいた取引が行われていると考えらえます。これが足元での株価上昇につながっています。…

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平和の訪れ、そしてその後は?

現在の停戦合意によって中東紛争が恒久的に終結するのであれば、マクロ経済の見通しが多少は揺らいだとしても、完全に不安定化することはなさそうです。市場は米国とイランの紛争前の水準に戻る、つまりクレジットスプレッド(信用格差による利回り差)が縮小し、株価収益率(PER)が上昇する可能性がありそうです。市場参加者を見ると、「平和を機に買い戻す」という心理が強まっているようですが、本当に2月27日以前の水準に戻るのでしょうか。仮に戻るとして、長期的な見通しにはどのような影響を及ぼすのでしょうか。 平和を機に買い戻す 4月7日に米国とイランとの間で2週間の停戦が合意されたことを受けて、(執筆時点では)市場は安堵感に包まれています。この停戦によって、恒久的な和平の合意とエネルギー市場の段階的な正常化につながることが期待されているようです。 合意の発表後、金利が低下に向かうとの市場見通しとともに、信用スプレッドは縮小し、主要な株式市場では上昇に転じました。しかし、停戦協定の綻びはすぐに明らかになり、4月8日に株式市場や債券市場が大幅きく上昇した後、すでに下落する動きもみられています。 もちろん、恒久的な和平合意が唯一の道筋というわけではないと思われます。報道によれば、イランが恒久的な合意のために求めているホルムズ海峡の航行権の継続的な管理などの要望事項は、米国やその地域の同盟国にとって受け入れられないものとみられます。 相互に受け入れ可能な条件について進展が見られない場合には、紛争が再燃するリスクがあり、市場は悪影響を受ける可能性が高いでしょう。地政学的リスクの高まりと米国の政策をめぐる不確実性が高まる時代では、投資見通しも不確実性が高いと言わざるをえないでしょう。 極端な事態も依然として起こりえるものの、政治的な現実を考慮すれば、おそらくその実現性は高くはないでしょう。そのため市場では、「好材料があれば買い」という考え方が中心的になっているように思われます。市場参加者は米国の政策に懸念を示しているものの、意図的に世界的な景気後退を引き起こすことはないという前提で取引を行っているように思われます。 実際に、世界経済は強い耐性を示しており、企業の借入コストは低く、利益成長も堅調とみられます。株式アナリストが予測を修正するのには時間がかかることが多く、企業から何らかのガイダンスが必要となりますが、今後12ヶ月間の1株当たり利益成長率に関する最新のコンセンサス予想は、改善傾向を示しています。 そして、世界は大きな技術革新の真っ只中にいることも認識しておくべきでしょう。この革新は一部の経済活動を混乱させる一方で、企業が生産性を向上させるための機会を提供し、投資家が新たなリターンの源泉を模索するための投資機会も生み出しているとみられます。 一歩下がって、混乱の先を予想する 中東の湾岸地域の緊張が恒久的に緩和されれば、投資家は再びポートフォリオの強化に注力できるようになるため、どの市場でリスクを取るべきか把握することが重要となるでしょう。投資のトレンドにおいて、主要な推進力になりうるテーマは数多く存在するとみています。 その際、この6週間に起こった出来事(米国とイランの紛争)から予想されるマクロ経済への影響を検討することが重要と考えます。主要な中央銀行はインフレ目標達成の可能性が変化したことでどのような対応が求められるでしょうか。また、エネルギーコストの上昇を受けて人工知能(AI)のサイクルやAI関連の設備投資に対する市場の懐疑的な見方に変わりはないでしょうか。 さらに、テクノロジーのエコシステムにおいて、プライベート・クレジット(ファンドなどを通じた融資)を通じた中型企業への資金供給が引き続き機能するかどうかという問題も考える必要があるでしょう。 停戦が維持されなければ市場が再び下落に転じるとみられる一方、停戦が維持されれば、比較的短期間に最近の高値水準を回復する可能性もあるでしょう。S&P500指数は過去最高値まで3%、ユーロ・ストックス指数でもあと4%の水準に迫っています。米ハイイールド債トータルリターン指数では既に過去最高値水準に達しており、投資適格債指数も過去最高値まで1%程度に迫っています(執筆時点)。それでは、それぞれが過去最高値水準に達したら、投資家はその後をどう考えるべきでしょうか。 さらに難しいのは、この紛争が停戦と長期にわたる消耗戦の間を行ったり来たり揺れ動くような場合、投資家がどのように対処すべきかという問題です。おおよそのシナリオは分かっており、原油価格が上昇し、スタグフレーションへの懸念が再燃し、市場の変動性は高止まりし、世界経済の見通しは悪化する可能性が高いとみられます。 紛争の当事者が限界に達するまで、市場はリスク回避の動きを続けることになるでしょう。それまでの間にも、変動性や取引による損失によって資本が減少し、投資家心理は悪化することが予想されます。 中期的に見て、市場は何をもたらすか 中期的な視点を持つということは、いずれ何らかの解決策が見出されると想定していることを意味します。残念ながら、それはその間の期待リターンがある程度低くなることを想定することでもあります。債券市場の利回りは1年前よりも高く、紛争勃発時と比べても高いものの、引き続き一定の取引レンジ内に収まったままです。 これまでのところ市場価格の設定体系に大きな変化は見られません。中央銀行の政策金利はほぼ中立水準にあり、長期的なインフレ期待は安定しているというのが基本的な見方です。つまり、中期的な名目利回りの予想は、米国債で3.5%~4.5%、欧州国債で2.5%~3.5%、英国債で4.5%~5.0%あたりとみられます。中央銀行が再び低金利政策に移行した場合に限って、国債の期待リターンが高まることも予想されます。 債券の投資タイミングという観点では、足元の地政学的な状況によってインフレリスクは構造的に高まっているため、債券市場の価格にそれが反映されるか、あるいは債券市場の利回りが投資家の考える水準を上回るようになるまではベストのタイミングとは言えないかもしれません。…

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月次市場見通し: 石油以外の要因と中国の耐性に着目

By Chris Iggo, アクサIM 資産運用研究所議長、アクサIM コア CIO、BNPパリバ・アセットマネジメント(以下、BNPPAM); Daniel Morris, BNPPAM チーフ・マーケット・ストラテジスト株式部門; Chi Lo, シニア・エコノミスト、BNPPAM 金利予想の変化 中東紛争に起因するインフレ率上昇の見通しは、金利予想を変化させ、その結果、債券市場のリターンは低下しています。短期のインフレ連動債市場は、金利変動への感応度が低く、リターンの大部分が実際のインフレ率から得られるため、インフレ率上昇や短期金利の上昇に対する一定の防御策となるとみています。そのため、投資家は通常、従来型債券への投資戦略よりもドローダウン(下落率)が小さく、このことはここ数週間の状況にその傾向が見られました。 短期金利が上昇している時、マネーマーケットや変動金利証券も一定の防御策となる可能性があると考えます。これらのキャッシュ相当資産は、投資家に対して短期的には相対的に高い安全性をもたらす可能性があり、今後、価格の下がったリスク性資産に投資するための資金として活用することもできるでしょう。紛争が長期化すれば、インフレと成長の見通しが悪化し、金利の変動が続くことになるでしょう。しかし、社債などのクレジット市場は、スプレッドが拡大し、利回りが2025年第2四半期以来の高水準にあるため、緊張が緩和する場合には、良好な投資機会が現れるとみています。このシナリオでは、中央銀行が金融政策を引き締める必要性も弱まり、短期金利の市場予想値が低下するため、短期債券市場のリターンを押し上げる可能性があるでしょう。 石油以外の要因 2月28日に中東紛争が勃発して1ヵ月の3月末までに、世界の株式市場(MSCI ACWI指数米ドル建て)はトータルリターンで約7%下落しました。資本財など石油価格に敏感なセクターが下落の大きな要因となり、石油関連セクターは上昇したものの、市場の下落全体を補うことはできませんでした。しかし、2月に上昇相場を牽引したセクターほど、3月の下落相場に与える影響が大きくなりました。金融セクターは、市場でプライベート・クレジットに対する懸念が続いていることもあり、3月の市場下落の最大の要因となりました。一方、テクノロジー関連のハードウェアや半導体セクターは、2月に上昇した分の多くを失いました。 その後、交渉による戦争終結への期待から、株式市場は3月後半には小幅ながら反発を見せ、世界の債券市場(ブルームバーグ・マルチバース指数で測定)を上回るパフォーマンスを示しました。株式市場の反発を牽引したのは、資本財、半導体、金融セクターでした。BNPPAMは今後の見通しについて慎重な姿勢を続けていますが、株式市場におけるセクター動向から判断すると、投資家は長期的な視点でどのように投資すべきかを検討するにあたり、石油関連産業と同様に、人工知能(AI)関連産業にも引き続き注視する必要があるとみています。…

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政治と為替、相対価値

米ドルは今年これまで、多くの通貨に対して下落が続いています。「価値低下」取引と名付ける極端な意見や、「米国売り」とする意見もあります。こうした意見では、金や銀の価格上昇を極端なドル安を正当化するための理由としています。それに関して、AXA IM Core Investments のCIOであるChris Iggoは、以下の見解を示しています。 米ドルの他の通貨に対する下落はおおむね秩序だっており、過去の動きと比較するには、ドルがさらに大幅に下落する必要があるでしょう。市場では米国経済に対して弱気のセンチメント(心理状態)もあるかもしれませんが、企業収益の力強い伸びが株価バリュエーション(投資尺度)の改善に寄与しており、米国経済は好調のようです。しかし、米国政府の政策が何を望んでいるのかは不明であり、短期的な市場のモメンタム(勢い)は低下しています。従って、世界の投資家は、為替変動がリターンにどのような影響を与えるかについて敏感になる必要があると考えます。とはいえ、ドル安と株価収益率の低下がもたらす投資機会は、いずれ検討に値するかもしれません。 米ドルの下落 1月16日付のレポートでは、米ドルの価値に対する脅威について論じました。それ以来、米ドルは幅広い通貨バスケットや金、銀、その他のコモディティに対して価値が下落を続けています。米ドル以外の通貨から米国資産に投資する投資家にとって、為替リスクをヘッジしていない場合、米ドルの価値下落は投資のトータルリターンに大きな打撃を与えています。ユーロ建てで見ると、米国の株式市場や債券市場は欧州市場と比べて、リターンが2~3%劣後しています(ポンド建て投資家も同様です)。ドルの短期的なモメンタムはマイナス方向です。米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に追加利下げを実施する見込みであり、米国政府のドル政策に関するメッセージは様々です。あらゆる市場の中でも、外国為替市場はモメンタムとトレンドフォロー戦略(相場の流れに乗って行う戦略)に左右されやすく、短期取引はテクニカル分析のシグナルによってしばしば引き起こされています。米ドル相場が、心理的に重要な水準である対ユーロ1.20ドル、対ポンド1.40ドルを突破して下落すると予想する投資家は多くいるでしょう。 多様な原動力 為替市場の分析は簡単ではありません。米ドルをめぐる見解には、政策の不確実性や地政学的関係の変化が反映しています。実際には、投資家がポートフォリオの組入れを変更して、米国資産や米ドル建て資産の投資割合を減らそうとしていることを示唆しています。為替市場の資金の流れを見ると、投機的なポジションをとる為替トレーダー以外の動きがあります。その一つに、貿易に関連した企業の資金フローがあり、また、長期的な資産配分に関連したポートフォリオの資金フローがあります。更に、公的機関が準備資産を調整することにも関連しているでしょう。基本的な理由も作用しています。米国の対外投資は記録的な純赤字になっており、このため、欧州や日本の経済成長に楽観的な見方が強まっている一方で、米国では国内総生産(GDP)の成長には不確実性があるとみています。また、各国との金利差も優位性が薄らいでいます。一方で、為替レートはファンダメンタルズに基づく均衡価格を大きく超えて動く傾向があることも覚えておく意味があるでしょう。米ドルはこれまでの15年間上昇傾向を続けています。米ドルの貿易加重指数の水準は過去10年の最高値から7.4%下回る程度です(国際決済銀行による狭義の米ドル貿易加重実効為替レートを使用)。 日本円は転換点か?? 方程式の逆側は日本円があり、日本円の為替レートは変動が大きくなっています。米ドルに対して、日本円は過去5年間のほぼ全期間で下落を続けています。最近の円の下落は、日本政府の債務持続可能性に対する懸念や、国債市場の価格下落を反映しています。経済理論によれば、金融政策が引き締めに向かい、財政政策が拡張的になる場合には債券利回りを押し上げ、通貨は強含むとされています。日本の経常収支は大幅な黒字を続け、外貨準備金も過去5年間に積みあがっています。1月23日の為替市場では、円の一層の下落を阻止するために日銀が介入するのではないかとの思惑が広がりました。(その背景には、円の下落は、日本のインフレを加速し、日本の金利や債券利回りをさらに上昇させるのではないかという懸念があります。)そして、この思惑は、円の下落を見越した取引を行うことへの脅威となっています。 市場での少数派意見として、日本の海外への投資家が自国に回帰する動きによって円が強含むとする見方があり、また、市場が見込むほどには日本の利回りは上昇しないとする見方があります。もちろん、日本にも政策の不確実性があります。しかし、日銀の債券市場に対する10年以上にわたる介入の後、債券利回りはようやく経済の中期的傾向を反映するようになりました。以前も述べたことがありますが、長期国債の利回りは、名目GDP成長率の長期的傾向に追随する傾向があります。日本ではインフレ率や実質GDP成長率が上昇しているので、2.25~2.75%の幅にある10年国債利回りはファンダメンタルズに基づく均衡水準なのかもしれません。もしそうだとすれば、今後を考えると、日本国債は割安の領域に入りつつあるでしょう。日本円にヘッジすると、米ドルないしユーロの利回りは日本の均衡利回りよりも低くなります。 米国株式市場の持続的強さが、ある程度米ドルの支えとなっている 短期的には、為替や債券市場の価格動向は市場のセンチメントを広く反映するでしょう。FRBは短期的なマクロ経済見通しでは相対的に中立の姿勢にあり、政策金利変更の前に様子見の姿勢をとるとしています。他方、地政学的な事態がドルに対してマイナスに働くかもしれない一方で、株式市場は米ドルにとって支援要因となっているとみています。昨年第四四半期の企業決算では、発表企業の売上が平均8.9%増加したことを背景に、19%の増益となっています。堅調な業績がテクノロジーセクターで広く報告されているため、人工知能(AI)バブルが崩壊することを示唆するものは無いとみています。 グローバルでの配分変更に関連する可能性がある相対的な市場動向に関する初期の市場コメントを考慮すると、米国市場のバリュエーションはやや低下しています(市場指数の水準はそれほど変わっていない一方で、企業業績は市場予想を超えています)。S&P500指数の12ヶ月予想株価収益率は6か月前の水準を2%(ナスダック総合指数では7%)下回っている一方、欧州では増加(ストックス欧州指数で5.8%)上昇し、日本でも(MSCI日本指数で15.5%)上昇しています。もし、米マクロ経済データが市場予想よりも強く、株式市場のリターンがテクノロジーブームにけん引されて上昇を続ける場合には、米ドルが最近の下落傾向から反転する可能性はいつでもありうるとみています。市場の一般的な見方では、ドル安を見ているようですが、ユーロ高が続くとの見方も強くありません。「米国買い」取引は、ある時点で逆張り取引として成功する可能性がありますが、もし政治的動向が米ドル安の原因とすれば、米ドルの上昇への本格的な反転は、今年11月の米国連邦議会の中間選挙よりも前に起こらないだろうとみています。 クレジットリターンは最高に達したのか? クレジット市場にも考察を行いましょう。投資適格債市場及びハイイールド債市場ともに利回りが狭い幅で推移しています。国債とのクレジットスプレッド(信用格差による利回り差)は主要市場の多くで、2008年の世界金融危機以降の最低水準に達しています。ファンダメンタルズはクレジット市場にとって依然支援的な状況にあるものの、クレジット市場の利回りは、中央銀行が債券市場に介入を行っていた2010年から2022年の期間の最高値を少し上回る水準になっています。2010年初旬には、米社債市場の利回りは4.6%でしたが、現在(執筆時)の利回りは4.8%です。ユーロ圏の投資適格社債市場の利回りは2010年初旬は3.7%でしたが、現在は3.1%、英国では5.6%に対し5.1%になっています。クレジットスプレッドが縮小しており、基準となる国債利回りがさらに低下する可能性はあまりないとみているため、クレジット市場でのキャピタルゲインの可能性は限定的とみています。社債市場はインカムの観点では投資機会があるとみており、というのも、社債市場の利回りは株式市場の配当利回り(特に米国)やキャッシュ金利を上回っています。筆者の予想としては、今年のクレジット市場のトータルリターンは過去3年よりも低くなるとみていますが、依然として潤沢なインカムフローを供給するとみています。ただし、景気後退時には国債利回りの低下により社債債市場の利回りが低下する可能性があるという点には、注意が必要でしょう。そうしたシナリオの中での問題点は、クレジットスプレッドが再び拡大して、クレジット市場のリターンが相対的に劣る可能性があるということです。 パフォーマンス等のデータの出所:LSEGワークスペース・データストリーム、ICEデータサービス、ブルームバーグ、BNPパリバ・アセットマネジメント。特に記載がない限り、2026年1月29日現在。 過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。また、記載内容は、2026年1月29日現在の資本市場を説明したものであり、特定の金融商品への勧誘や推奨を意図したものではありません。…

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