韓国株は、半導体やその他のコンピューター・ハードウェア株を中心に急騰しています。米国では、テクノロジー企業の決算発表が好調で、ナスダック100指数は3月末以降、S&P500指数を5%上回って上昇しています(執筆時点)。
データセンターの容量増強におけるボトルネックを解消する新しい技術が、有望な投資テーマとして浮上しています。テクノロジーセクターの中では、インフラ整備やツール供給といった「土台」となる事業が依然として大きな存在感を示しているようです。
しかしながら、中東情勢の動向によっては、市場の上昇トレンドが反転する可能性も依然として存在していると思われます。エネルギー不足が経済活動や消費に及ぼす影響は、まだ最悪の事態を迎えていないのかもしれません。ホルムズ海峡における問題の解決は、投資家の信頼回復に不可欠です。そのため、米国とイランの協議の行方にすべての注目が集まっていますが、協議がいつ行われるかは、現時点では不透明な情勢です。
- 主要なマクロテーマ –エネルギー不足が今後の経済活動に及ぼす影響は不確実
- 主要な市場テーマ –テクノロジーハードウェアが引き続き主要な投資テーマ
何にでも必要となる半導体チップ
2026年もほぼ3分の1が過ぎましたが、中東紛争にもかかわらず、株式市場のリターンはテクノロジー関連銘柄が引き続き牽引しています。韓国、台湾、日本、イスラエルといったテクノロジー主導型市場の目覚ましいパフォーマンスからもこうしたトレンドは明らかです。ナスダック100指数はアジア市場に比べて出遅れており、S&P500指数も同様に出遅れているものの、いずれも良好なリターンを記録しています。
「目覚ましい」と「良好な」との微妙な違いは、韓国や台湾の株式市場が半導体製造と関連銘柄が中心であるのに対して、米国市場にはソフトウェア企業がはるかに多く存在しているという点です。人工知能(AI)が「サービスとしてのソフトウェア」(SaaS: Software as a Service)のビジネスモデルを覆しかねず、それによってソフトウェア企業が中期的に大きな影響を受ける可能性があるという懸念があります。
ピック&シャベル戦略(金鉱を掘る人よりも道具を売っていた商人の方が儲けたという例え)を活用し、AIを支えるインフラやサービスを提供する企業に投資するトレードは引き続きうまく機能しています。足元で、台湾の半導体メーカーTSMCが売上高見通しを引き上げたほか、すでに1-3月期決算を発表したS&P500構成銘柄のテクノロジー企業はまだ多くないですが、とりわけ半導体分野で市場予想を大幅に上回る好決算が出てきています。
テクノロジーは引き続き世界の株式リターンをけん引する主要な原動力となっており、今年はこれまでのところ、半導体とアジア市場への投資が最も有効だったと言えます。
テクノロジー企業の受注残は豊富で、データセンターやコンピューター設備の拡張は減速の兆しを見せていません。しかし、サーバーの稼働や、拡大し続けるAI利用に伴うコンピューティング需要を満たすには、膨大なエネルギー、水、そして重要な金属資源が必要となります。こうした潜在的なボトルネックを解消する技術、例えば希少な水資源への負荷を軽減する高効率冷却技術などに、新たな投資機会が生まれているとみられます。
特に中東情勢を勘案すると、エネルギーの不足は、テクノロジー業界にとって潜在的な課題となるでしょう。原油と液化天然ガス(LNG)の両市場で、深刻な供給の問題が発生しています。テクノロジー企業が自社の発電設備に投資しているにもかかわらず、データセンターのコストは増加することが見込まれます。
活況を呈しているマーケット
ただし、エネルギー危機がAI投資を失速させる可能性は低いと思われます。確かに課題ではありますが、再生可能エネルギーや原子力、水力、バイオマス発電などを通じた容量の増強によって、最終的にはエネルギー供給は回復し、さらに強化されるとみています。
コンピューティング能力の拡大、通信ネットワーク、発電、送電といった相互に関連するテーマは、今後しばらくの間は、投資戦略の中心テーマであり続けると予想されます。
今年の年初来で、S&P500の資本財・サービス指数で上位5位のリターンを記録した銘柄は、いずれも電力サービス・機器の提供に携わる企業です。
事態は長期化の見込み
ニュースの見出しは、引き続き金融市場の変動要因となっています。ここ数週間で指摘してきたように、現在のマーケットでは平和的な解決が実現し、エネルギー市場が徐々に正常化することで、長期的な価格変動や石油・ガス製品に依存する経済活動への混乱が最小限に抑えられるという期待に基づいた取引が行われていると考えらえます。これが足元での株価上昇につながっています。
しかしながら、投資家はより深刻な事態にも備えておく必要があります。今後数ヶ月、数年にわたって中東地域の政治情勢は不透明であるとみられます。石油をめぐる貿易の混乱が繰り返し発生し、政治的なリスクプレミアムが持続的に上昇する可能性もあるでしょう(例えば、船舶保険料の高騰につながるといったケースも考えられます)。
中東情勢が不安定な状態が続く場合、石油・ガスから他のエネルギー源への移行は、とりわけエネルギー危機の影響を強く受けているアジア経済にとって、ますます重要になりそうです。
ホルムズ海峡を通る石油の移動が制限された状態が続くと、需要自体が落ち込むとの懸念もあります。すでにアジア諸国では、エネルギー需要削減のための措置を講じています。
欧州ではジェット燃料の不足を懸念する声が強まっています。そして、湾岸諸国で採掘される化石燃料由来の原料を使用する工業プロセスが、一部の国で縮小を余儀なくされる可能性があります。農家では、春の種まきシーズンに必要な肥料が不足するとの懸念も高まっています。
3月のマーケットの下落は、戦争当初の影響に対する最初の反応に過ぎず、今後さらに好ましくないニュースが続く可能性もあるのでしょうか。マーケットの回復は、米国、イスラエル、イランが和平に向けた道を歩み始めれば、マクロ経済への影響は限定的にとどまるという見方に基づいていたと思われます。
エネルギーの貿易混乱による影響は、すでに顕在化し始めている可能性があります。例えば、企業のコスト上昇、在庫の減少、原材料の不足、燃料価格の高騰に対する国民の不安(アイルランドで最近発生したデモなど)、消費者信頼感の低下、エネルギー消費の制限などが挙げられます。
どのようなシナリオが実現するかを判断するのは難しいですが、起こりうるシナリオの1つに世界的な景気後退の可能性は含まれるべきだと思われます。
先進諸国が公表した複数の3月の統計データによれば、ガソリン価格をはじめとする一次エネルギー関連製品の価格上昇が、消費者物価に及ぼしている初期的な影響が見られています。インフレ期待という観点から見ると、市場では短期的には緩やかな上昇が織り込まれており、実際のインフレ率も最終的にはエネルギー価格の変動を多少なりとも反映することになるでしょう。
ただし、市場が経済活動への潜在的な打撃、供給の途絶、企業の利益率の圧迫まで織り込んでいるかどうかは、現時点で不透明です。今のところ、テクノロジー株の強気相場が、投資家のこうした懸念を覆い隠しているものとみられます。
在庫の減少
湾岸地域からタンカーで西側諸国へ輸送された最後の原油は既に到着しており、今後は在庫が枯渇し始めることになります。筆者が今週読んだある記事では、「海上にはもう原油は残っていない」と書かれていました。
ロッテルダム港は、欧州における原油貿易の主要拠点です。通常であれば、毎年約1億トンの原油がロッテルダム港を通過し、オランダ、ベルギー、ドイツの製油所へと輸送されます。
第1四半期の報告書では、原油やLNGを含む貨物総量への影響はごくわずかであることが示されていました。しかし、エネルギー貿易への影響は第2四半期に顕著になると予想されています。
ホルムズ海峡の開通が早急に実現しなければ、世界経済にとって大きな打撃となるでしょう。
米国とイランが協議を行い、海峡の開通に関する合意に至れば、市場は再び上昇するとみられます。しかし、たとえ合意に至ったとしても、既に生じた損害は、今後数ヶ月のうちに企業活動や業績見通し、そして公式のマクロ経済データにおいて、より顕著に現れ始める可能性があります。市場は依然として強気相場にありますが、変動は今後も避けられないと思われます。
企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。また、記載内容は、2026年4月23日現在の資本市場を説明したものであり、特定の金融商品への勧誘や推奨を意図したものではありません。
(オリジナル記事は4月24日に掲載されました。こちらをご覧ください。)