2026年2月末に始まった米国とイスラエルによるイラン攻撃と石油市場等への影響が広がっています。その余波は新興国にも及んでおり、短期的には石油関連製品の不足などの混乱に直面しています。しかし中長期的に見ると、主要新興国は財政の健全性と内需の自律的拡大に支えられており、レジリエンス(回復力)を発揮するとみています。
そして、新興国の国内密着型の小型株は、構造改革、AI(人工知能)やデジタル化の促進の恩恵を受けており、その傾向はさらに拡大するとみています。
新興国へエネルギーショックの影響
中東紛争およびそれによるエネルギーショックの悪影響を受けるのは、中東の原油に大きく依存するインド、中国など主にアジアの新興国です。一方、その恩恵を受けるのは、中南米のブラジル、メキシコなどの石油輸出国です。

- 原油等の輸入国
インドは液化石油ガス(LPG)輸入の約9割を中東に依存しており1、レストランや各種企業は急激な燃料不足や高騰に見舞われています。中国は主要原油生産国でありながら世界最大の原油輸入国で2、中東からのLPGやナフサに多く依存しています。なお、原油不足に対して中国は戦略備蓄で対応しようとしており、インドは調達の多様化を進めています。
- 原油等の輸出国
一方、石油を輸出する新興国は原油価格上昇の恩恵を受けています。中南米ではそれが顕著で、産油国であるブラジル、メキシコなどでは株価の上昇が続いています。ブラジル株では海外投資家の資金が流入しています。ただ、農業大国のブラジルは、原油高に伴う肥料高騰の影響を大きく受ける側面もあります。
エネルギーショックでも「新興国小型株戦略」ポートフォリオでは大きな変化はなし
「新興国小型株戦略」運用チームによれば、最近の原油価格の変動は、そのポートフォリオに大きな変化をもたらしていません。もっとも、バリエーションやモメンタムの観点から、エネルギー・セクター内でのポジションの若干の変化に寄与しています。それでも、1月末から3月末にかけて最も顕著な国別構成の変化が生じたのは、エネルギー以外のセクターや市場においてでした。
短期的には新興国全体ではマイナスになりやすい可能性
中東紛争が長引き、石油等の不足や価格高騰により、世界的な景気減速への恐れや全般的な物価の上昇等で市場のリスクオフ・センチメントが続いた場合、新興国全体としてはマイナスの影響を受けやすくなります。特に、中東の原油・ガス等に大きく依存し、財政が脆弱で政府の信用力が低い新興国への影響が大きくなります。

なお、先進国市場から新興国市場への資金の移動は続いています。主要新興国で主に構成される新興国株価指数の伸びは、過去1年間では米国株を代表するS&P500指数と同程度もしくは上回って推移しており、2026年の年初来ではその幅はさらに大きくなっており、中東紛争の勃発後もその傾向は変わっていません(図表を参照)。
新興国には長期的には耐性があり全般的な影響は限定的
中長期的に見た場合、主要新興国は財政の健全性と内需の自律的拡大に支えられ、原油高等に対する耐性があり、レジリエンスを発揮するとみています。主要新興国では財政赤字の削減が進み、外貨準備が潤沢に積み上がっており、中央銀行がインフレ抑制で効果を上げています。また、主要新興国では、豊富な労働力人口が経済成長をけん引する「人口ボーナス」を背景に中間層が増えており、内需の自律的拡大を支えています。そして、そういった堅調な新興国の恩恵を大きく受けるのが小型株です。
- 内需拡大の恩恵
新興国では、内需の自律的拡大により、需要が旺盛な中間層向けの消費分野が広がっています。食料などの必需品から、家電、自動車、教育、金融サービス等の多角的な消費に広がっています。世界銀行のデータによれば、2009年ごろから主要新興国の最終消費支出は着実に拡大しています(図表を参照)。これにより、国内産業の裾野が広がり、製造業からサービスまでの幅広い需要が形成されており、それに対応する多彩な小型企業も増えています。

- グローバルマクロ感応度の低さ
新興国の大企業の多くはグローバル・サプライチェーン(供給網)に組み込まれており、世界的なマクロ経済動向に左右されます。しかし、新興国の小型企業の事業は基本的に国内市場向けなので、グローバル・サプライチェーンの影響を大きくは受けません。
新興国小型株に構造改革、AI、デジタル化の後押し
主要新興国では、複雑な許認可手続きの簡素化や税制改革等の構造改革により、小型企業の競争力が向上しています。また、AIの導入により、リソースが限られている小型企業でも、自動化や高度なマーケティング、多言語対応やニッチ市場の深掘りが可能になっています。さらに、デジタル化の進展により、デジタル決済やeコマースが普及することで、これまで金融サービスを使えなかった巨大な消費者層の金融包摂が進み、小型企業の新たなユーザーとなっています。
なお、広範な地域と膨大な数の企業を対象とする新興国小型株市場では、人力によるリサーチには限界があります。このため、ビッグデータを使って多数の銘柄群を網羅的に分析するクオンツ運用が圧倒的な優位性を発揮します。BNPパリバ・アセット・マネジメントの株式クオンツ投資(EQI)アプローチは、長年にわたり蓄積されてきた独自のデータベースとモデルを使い、詳細で一貫したファンダメンタル分析を行っています。
新興国小型株戦略では、クオンツ運用の優位性を活用し、新興国小型企業の投資機会や成長性、分散投資を追求しつつ、優れたリターン創出を目指しています。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
※本資料で使用している指数について
MSCI新興国株指数:MSCI社が公表している新興国の株式市場の値動きを示す時価総額加重平均型指数です。
S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。
※本レポート中の指数等の著作権、知的財産権、その他一切の権利はその発行者に帰属します。
[1] https://www.pib.gov.in/PressReleasePage.aspx?PRID=2238525®=3&lang=1
[2] https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=64544
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