昨年は、世界の二大民主主義国(インドと米国)を含む60カ国以上、世界人口のほぼ半数に及ぶ国々で国政選挙が行われましたが、地政学的な問題はいまだ解決されておらず、景気後退を示唆すると言われる長期金利が短期金利を下回る逆利回りの状態も散見されました。これらは、市場のボラティリティが高まっていることを意味しています。さらに重要なのは、株式市場が上半期と下半期で異なる側面を見せたことです。例えば、インドの株式市場は、上半期は世界で最もパフォーマンスが高かったのに対して、下半期は低迷しました。要因は、米ドル高に加えて、国政選挙やモンスーンによるインド経済の減速によるものだと考えられます。その結果、インド経済の成長が予想以上に減速したと言えるでしょう。全体として、NSE500指数は2024年11月末までの11カ月間で18.1%上昇しました。3年間のCAGR (年平均上昇率)で見ると17.2%、5年間のCAGRで19.9%、10年間のCAGRでは14.6%となっています。また、インド国内のミューチュアルファンド(投資信託)からの資金流入は、11カ月間の累計で6.2兆インドルピー(11.1兆円)1と引き続き好調でした。2024年には、NTPC Green Energy、OLA Electric Mobility、Swiggy Ltd2などのインドで成長が期待される新たな産業で大規模な新規公開株式(IPO)もあり、インド経済の変化を表しています。
2025年は、そうした新たなテーマや産業がより一層注目されると予想しています。具体的には、主要なマクロテーマと4つの潜在的な成長分野がパフォーマンスを左右すると考えています。真っ先に考えられるマクロテーマとして、米トランプ大統領の新たな経済政策が世界貿易に混乱をもたらすこと、そして地政学的動向にも影響を与える可能性が高いという点です。 続いて、インド経済が、政府支出と企業支出の双方が拡大するにつれて、緩やかな回復が見られると考えています。最後に、イノベーション主導のテーマがますます注目されると予想しています。私たちは、金融化(Financialization)、インダストリー5.0(Industry 5.0)、リテール化(Retailization)とエネルギー転換(Energy transition)の4つの投資機会(F.I.R.E.)に注目しています。
世界的に見ても、米国の諸外国に対する関税に注目が集まっています。現在もインドは、関税の影響を大きく受けています。しかしながら、関税を引き上げることは米国にインフレ圧力をもたらすことにもなりかねません。これは、金利が急速には低下しないことを意味しており、米10年債利回りを見ても、米連邦準備理事会(FRB)が昨年0.75%の利下げを実施したにもかかわらず、2024年末には年初の利回り水準を上回っています。関税の引き上げと米利回りの上昇が重なり、米ドルは上昇傾向が続くことが予想されます。新興国が輸出競争力を維持するためには、新興国通貨安の兆候を注視する必要があります。中国経済はすでに内需が減速しており、輸出面でのショックに対して脆弱であるため、同様に通貨の動きが重要になるでしょう。
一方で、世界的な地政学リスクの緩和が期待されます。これは、米ドル高と相まって、原油価格を含むコモディティ価格の上昇が抑制される可能性が高いことを意味します。この点は、インド経済にとって良いニュースと言えます。
インドでは、直近の2四半期のGDPが伸び悩んでいることから、成長ストーリーに関して不安視する声もあります。しかし、第1四半期は国政選挙、第2四半期はモンスーンの影響で政府支出が影響を受けたという事実を踏まえて考える必要があります。インドの政府支出は徐々に回復すると予想しており、25年度第3四半期あたりからGDP成長率は上向くと予想しています。当社では、6-7%程度の実質GDP成長率、4-5%程度のインフレ率、つまり10-12%程度の名目GDP成長率を維持することが、インド経済にとって好ましい状況だと主張してきました3。
私たちは、発展途上国から先進国へのインドの旅はまだ始まったばかりだと強く信じています。この旅の中心となる要素の1つは、イノベーションです。具体的に、先ほどの4つのテーマ(F.I.R.E)が中期的にインド経済をけん引すると予想しています。
金融化:インドは、すでに電子決済の普及率において先駆者的役割を果たしています。シームレスなデジタル金融ソリューションが浸透することで、包摂的な成長、生産性の向上、資本アクセスの向上、そして投資機会がもたらされると考えています。
インダストリー5.0:今後数年間にわたり、インドの製造業の再生が成長の基盤になると予想しています。インド国内の需要増加に加えて、製造工場を中国以外の国にも設ける動き(チャイナ・プラスワン)が強まることで、インドの製造業が今後世界的なシェアを獲得することになるでしょう。さらに、インドが新しいテクノロジーのトレンドをけん引するリーダーになることも期待しています。何故ならば、どの産業においても中心的役割を担うソフトウェア分野に、インドでは30年以上前から注力してきたからです。
リテール化:Z世代は、2035年までに1.8兆米ドルの支出に影響を及ぼすと予想されています4。彼らが何をどのように購入するかなど、消費のあらゆる場面でテクノロジーが重要な役割を担うでしょう。こうしたテクノロジーは、株式市場の構造に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。
エネルギー転換: これは世界的なテーマですが、インドのエネルギー情勢も変えようとしています。従来の化石燃料(石炭や原油)から再生可能エネルギー(太陽光や風力発電、電気自動車)への移行は、すでにバリューチェーン全体に大きな投資機会をもたらしています。
最後に、インド株のバリューションは、市場全体で見れば過去10年平均と同等であるため、適正な水準である考えられます。一部には割高な銘柄もありますが、市場全体では様々な投資機会を見出すことができるでしょう。全体として、当社は2025年のインド株の見通しは明るいと考えており、世界的な不確実性の影響を受けにくい経済・市場として、インドが再び注目されると考えています。同時に、インド経済はますます力強く成長し続けるでしょう。
2 当レポートでは銘柄やセクターに言及していますが、当該銘柄やセクターを推奨するものではありません。
3 出所:バローダBNPパリバ・アセットマネジメント(2024年11月30日時点)
4 出所:BCG(2024年11月30日時点)
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