Alexander Bernhardt

Alexander Bernhardt

Global Head of Sustainability Research

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Location Boston

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サステナビリティは曲がっても、折れない

政治的圧力や経済的な理由によって、世界はサステナビリティ戦略の大きな変化を目の当たりにしています。今回のポッドキャスト「Sustainability, bending, but not breaking」では、サステナビリティ・リサーチの責任者であるAlexander Bernhardtが、チーフ・マーケット・ストラテジストであるDaniel Morrisとの対談を通じて、変化するサステナビリティの状況にどのように適応し、進化していくべきか解説します。 ここ数ヶ月は、サステナビリティへの取り組みが大きな圧力にさらされ、困難な時期となりました。対談では、こうした環境下においてもサステナビリティには新たなパラダイムシフトが起こり、ポジティブな進展も見られたと指摘しています。 “Talking heads”はBNPパリバ・アセットマネジメントが提供するポッドキャストにおける投資情報のプログラムです。今後も投資家の皆様にとって、重要なトピックに関する詳細なインサイトに加え、サステナビリティの観点から世界の市場分析を行い、投資プロフェッショナルとのより有意義な対話を展開します。 *当プログラムは英語のみとなります。英語スクリプトは、以下よりご覧いただけます。

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サステナビリティの基準が投資パフォーマンスに与える影響

銘柄選択にサステナビリティ(持続可能性)の基準を適用することで、ポートフォリオの投資パフォーマンスにどのような影響を与えるかについて、議論が白熱しています。BNPパリバ・アセットマネジメントでは、2020年から2023年の投資パフォーマンスに関する調査を公表しました。同調査によれば、選択したサステナビリティの基準によって、その結果は異なることを示しています。この重要な点を明確にすることで、サステナビリティ関連の投資への理解がより深まると私たちは考えています。 以下、サステナビリティに関連する 3 つの投資アプローチにおけるパフォーマンスの比較です。 投資アプローチを評価する際、投資家はすべてのアプローチが同じ目標を持っているわけではないことを認識する必要があります。リスクとリターンにおいて、リスクを軽減することに主眼を置き、リスク側により多く貢献する投資アプローチもあります。逆に、サステナブル投資などはリターンの向上によりフォーカスしていると考えられます。 <ご留意事項> 本資料はBNPパリバ・アセットマネジメントグループが作成した情報提供用資料を、BNPパリバ・アセットマネジメント株式会社が翻訳したもので、特定の金融商品の取得勧誘を目的としたものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当社は、翻訳や編集には正確性を期していますが、必ずしもその完全性を担保するものではありません。万一、英語と翻訳との間に齟齬がある場合には、英語の原文が優先することをご了承下さい。 本資料における統計等は、信頼できると思われる外部情報等に基づいて作成しておりますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。本資料には専門用語や専門的な内容が含まれる可能性がある点をご留意ください。本資料中の情報は作成時点のものであり、予告なく変更する場合があります。本資料中の過去の実績に関する数値、図表、見解や予測などを含むいかなる内容も将来の運用成績を示唆または保証するものではありません。本資料で使用している商標等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該商標等の権利者に帰属します。 BNPパリバ・アセットマネジメント株式会社は、記載された情報の正確性及び完全性について、明示的であるか黙示的であるかを問わず、なんらの表明又は保証を行うものではなく、また、一切の責任を負いません。なお、事前の承諾なく掲載した見解、予想、資料等を複製、転用等することはお断りいたします。 投資した資産の価値や分配金は変動する可能性があり、投資家は投資元本を回収できない可能性があります。新興国市場、または専門的なセクター、制限されたセクターへの投資は、入手可能な情報が少なく流動性が低いため、また市場の状況(社会的、政治的、経済的状況)の変化により敏感に反応しやすいため、より不安定性があり、大きな変動を受ける可能性があります。 環境・社会・ガバナンス(ESG)投資に関するリスク:ESGと持続可能性を統合する際、EU基準で共通または統一された定義やラベルがないため、ESG目標を設定する際に資産運用会社によって異なるアプローチが取られる場合があります。これはESGと持続可能性の基準を統合した投資戦略を比較することが困難であることを意味しており、同じ名称が用いられていても異なる測定方法に基づいている場合があるということです。保有銘柄のESGや持続可能性に関する評価において、資産運用会社は、外部のESG調査会社から提供されたデータソースを活用する場合があります。ESG投資は発展途上の分野であるため、こうしたデータソースは不完全、不正確、または利用できない場合があります。投資プロセスにおいて責任ある企業行動指針を適用することで、特定の発行体やセクターが除外される場合があります。その結果、当該指針を適用しない類似の投資戦略のパフォーマンスよりも良くなったり、悪くなったりする場合があります。

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パリ協定に整合した投資: ネットゼロ経路を実現するフレームワーク

世界が気候変動という喫緊の課題に直面するなか、機関投資家は投融資先企業の温室効果ガス排出量(ファイナンスド・エミッション)をネットゼロ目標に整合させる方法の追求に一段と力を入れています。この目標を達成する単一のフレームワークは存在せず、現在提示されているフレームワークは、従来型の化石燃料の投資除外やカーボンフットプリントの削減等のフレームワークから売上高(または営業費用や設備投資)が環境移行に関連している比率の大きい企業への投資を優先するフレームワークまで多岐にわたります。投資家の多くはネットゼロ・ポートフォリオ達成に向けたアプローチの中で、企業との対話(エンゲージメント)や公共政策の支持・提唱を取り入れるなど、様々なフレームワークに真摯に取り組んでいます。 当レポートでは4つの投資フレームワークを検証します。つまり、BNPP AMのスクリーニング基準「NZ:AAA(ネットゼロを「達成中」「沿った」「沿っている」に分類)」、パリ協定整合ベンチマーク(PAB)規則、化石燃料の投資除外、クリーンエネルギーのテーマ型投資です。 PAB規則と化石燃料の投資除外は温室効果ガスを現在最も排出している企業を除外するため、ポートフォリオの炭素強度の低減に効果的であることが明らかになっています。また、PAB規則はポートフォリオの炭素強度の長期的低減に向けた軌道を定め、明確なネットゼロ経路につながります。しかし、この2つのフレームワークはバックワードルッキングな炭素強度の低減に基づいており、過去の排出データに依存しています。過去の排出データは開示されていない場合も多く、データベンダーのモデルで推計された値もあり、不確実性を伴います。そして、この2つのフレームワークはよりフォワードルッキングな側面(例えば、企業の信頼できる脱炭素化計画)を公式には取り入れておらず、企業が属する業界によってその起点が異なること(つまり、排出量ネットゼロを2050年までに達成するために必要な取り組み水準も異なること)も考慮していません。また、現時点における最大の排出企業や化石燃料関連企業への投資を完全に取り止めれば、ネットゼロへの進捗加速を目指していた企業とのエンゲージメントやスチュワードシップを求める投資家のインセンティブはなくなってしまいます。 一方で、ポートフォリオとネットゼロ目標の整合性(アラインメント)を分類する新たなフレームワークはフォワードルッキングなデータに基づいています。このフレームワークは足元の脱炭素化にはさほど重点を置かず、将来的に有望な企業の掘り出しをより重視します。すなわち、たとえ現時点では高排出企業でも気候変動に真剣に取り組んでいる企業、言い換えれば2050年までのネットゼロ達成にコミットしており、それを実現する戦略を持っている企業です。このフレームワークを打ち出したのは「気候変動に関する機関投資家グループ(IIGCC)」で、フレームワークの設計は国連提唱の「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(NZAOA)」や国連の「非国家主体の排出量ネットゼロ・コミットメントに関するハイレベル専門家グループ(HLEG)」の提言に即しています。PAB規則や化石燃料の投資除外とは異なり、このアラインメント・フレームワークでは高排出企業全てを除外はせず、現実世界の排出を減らすことを目的にエンゲージメントを促します。当レポートでは、アラインメント・フレームワークを実践する方法を解説するとともに、他のフレームワークとの比較も行います。

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Egypt Cairo at sunset

COP27が公正な移行に向けた一歩を踏み出すことが重要

気候変動会議COP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)において、「損失と損害」(気候変動によって引き起こされた途上国の「損失と損害」を指す)の問題を前進させることは、レジリエント(回復力のある)でより平等なネットゼロ世界への公正な移行を実現するための基本となります。以下、Global Head of Sustainability ResearchであるAlexander Bernhardtが、COP27についての見解をまとめています。 エジプトでの COP27が近づくにつれ、気候正義は多くの国の議題の上位にあり、とりわけ「損失と損害」という言葉が会議前の議論の中心となっているようです。 気候変動の影響を最も受けた国、つまりグローバル・サウス(アフリカ、ラテンアメリカ、アジアなどの途上国)が、気候変動の拡大に歴史的に責任を負った国々、つまりグローバル・ノース(先進諸国)によって補償されるべきという「損失と損害」の問題は、毎年のCOPでの交渉において長期にわたり問題となってきました。 裕福な国々は伝統的に、気候変動への非難と責任に関する議論を避けるため、この問題に反対してきました。しかし、流れは変わりつつあるようです。グローバル・ノースが気候変動に関与してきた役割を認め、グローバル・サウスに報いるよう求める圧力が高まっています。 前向きな動きも見られています。デンマークは最近、これまでの流れに反して、「損失と損害」に対して資金を拠出することを決めました。そして、米国や欧州連合(EU)も、この問題に関する協議を支持しています。 途上国側も、COP27のホスト国であるエジプトとともに、今年の会場となるシャルム・エル・シェイクで、「損失と損害」の突破口を探っています。地球温暖化による海面上昇の被害を受ける小島嶼国同盟は、グラスゴーで開催されたCOP26で実現できなかった「損失と損害」に対応する基金創設を提案する予定です。ドイツは、気候変動リスクの影響に対して迅速な財政対応を可能にするグローバル・シールド(Global Shield)と呼ばれる保障基金を提案しましたが、広範にカバーされていないという理由で気候運動家には受け入れられていません。 途上国がこの問題を進めようとするのには、十分な理由があるようです。脱炭素化の取り組み支援のために先進国が2020年までに年1000億ドルを資金拠出するという目標は依然として達成されておらず、先進国の取り組み失敗による資金不足によって、その達成は2023年もしくは2024年までずれ込むと予想されています。 公正な移行と、それが投資家にとって意味すること COP27 の会議が成功するためには、「損失と損害」について有意義な進展をもたらすことが重要です。パキスタンでの壊滅的な洪水など気候災害が大きな混乱をもたらす中、途上国がこうした賠償や気候正義を要求するのは正しいと私たちは考えています。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今年、公正な移行に向けた進展を加速させることの重要性を強調するとともに、持続可能な開発は、包摂性のある社会の実現も同時に強化できるとの見解を示しました。 民間セクターは、公正な移行と気候適応への資金提供において、それを必要とするコミュニティで大きな役割を果たすことができます。投資家としてはどのような行動よりも、社会的要因を資本配分やスチュワードシップ活動に統合すること、あるいはソーシャルボンドへの投資を行うことです。 COPの議題で他の注目点は?…

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Russia hydroelectric power station in Siberia Krasnoyarsk

より密接に絡み合う気候変動とエネルギー問題

エネルギー危機によって、エネルギー移行計画はすでに混乱に陥っていました。そして、今夏の熱波はさらに事態を悪化させました。この危機が気候変動目標にどのような影響を与えるか、Global Head of Sustainability ResearchであるAlexander Bernhardtの見解をまとめます。 私たちは無限に繰り返すサイクルにいるようです。ウクライナでの戦争勃発を受けたエネルギー供給ショックによって、各国政府は化石燃料の輸入を多様化させ、家計や企業への影響を軽減するため早急にエネルギー安全保障戦略を組み直すことになりました。ガス価格は急騰し、より炭素排出の多い石炭の経済合理性が高まってしまいました。こうした出来事は、温室効果ガスの排出と気候変動に明確な影響を及ぼします。 猛暑が続いた夏は、気候変動がエネルギー供給の問題をさらに悪化させる可能性があることを明確に示しました。河川の水位低下や猛暑によって、燃料供給と電力供給に影響を与えています。このサイクルをどのように断ち切ることができるでしょうか? エネルギー危機への緊急的な対応 ガスパイプラインの輸送を徐々に削減してきたロシア政府は、現在、西側諸国が経済制裁を維持している限り、「ノルドストリーム1」のパイプラインを通じた欧州へのガス輸送は削減され続けると述べています。これにより、欧州連合(EU)諸国は共同で採択した「RePowerEU計画」を加速させるとともに、在庫の再構築、節約したガス使用を迫られています。 こうした計画には、再生可能エネルギーが重要な要素として含まれているものの、EU加盟国は新たな液化天然ガスのインフラ構築にも取り組むことを明らかにしています。たしかに液化天然ガス(LNG)は、石炭よりも炭素集約度(炭素排出)が小さい可能性があります。しかし、それを輸送することによるメタン排出量(多くの場合は長距離となる)を考慮すると、そのエネルギー源や一時的な排出量によっては、輸送されたLNGはパイプラインによるガスと比較して、温室効果ガスのフットプリントが大きく悪化することも考えられます。 英フィナンシャル・タイムズの最近の分析によると、欧州政府は今冬、化石燃料のインフラと供給に500億ユーロを支出する予定ですが、これは「RePowerEU計画」で割り当てられた120億ユーロの4倍以上の規模です。また、26カ所のLNGターミナルを建設する計画も含まれています。また国によっては、閉鎖が決まっていた発電所の寿命を延長させたことに伴い、石炭への支出を増やす予定もあります。 問題は悪化しており、たとえばライン川では水位の低下によって、石炭を積んだ船が負荷を減らして航行せざるを得ず、支流の石炭ステーションの運用に影響を与えています。また、スペインやポルトガルなど水力発電施設が影響を受けている国では、よりガスの需要が高まっています。 こうした気候変動に起因する悪化は、将来より頻繁に起こるようになるでしょう。そして、エネルギーのコストを増加させています。石炭需要の高まりと物流問題が相まって、1トン当たりの一般炭の価格は2021年初頭の60米ドルから450米ドルに上昇しました。ドイツ、オランダ、チェコ、ギリシャはいずれも、石炭生産量もしくはそれに応じた採掘活動を増やしています。一方、欧州の一部の生産工場では、高いエネルギーコストを避けるために閉鎖されている状況です。 中国では、水不足の南西部で水力発電のレベルが低下しており、その結果、発電用に燃焼される石炭が増え、工場の閉鎖も見られます。 EU加盟国は、エネルギー安全保障のスキームを導入してきました。ドイツは、エネルギー効率化の対策を実施しており、現在、EUが推奨するガス貯蔵目標の80%を超えています。天然ガス、石油、石炭の平均輸入価格は大幅に上昇し、7月には前年比で132%の上昇となりました。少なくとも1つの原子力発電所の運用を延長しており、フランスとの間で、必要に応じてガスと電力を交換することで合意しています。 EUはまた、電力会社への課税によって、記録的な高水準となったエネルギーコストに苦しむ企業や家計を救済することも計画しています。 気候目標達成への影響 欧州の政策当局者は、ガスと石炭への多様化の推進を単なる一時しのぎの手段と見なしています。しかし、新しいインフラへの投資を行う場合、化石燃料への依存がより長期化するかもしれないとの懸念があります。 このエネルギー危機でガス契約が急増し、石炭発電会社がヘッジ目的で炭素排出権を購入したため、EU-ETS(EUの排出量取引制度)における排出権の価格が上昇しました。価格の上昇は、排出量を抑制することに寄与するかもしれません。しかし、欧州委員会は、ETSの参加者に290億ユーロの支援を約束することで、エネルギー集約型の企業を部分的に補償しているのです。…

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Cars parked

欧州のエネルギー自給を可能にする第3の選択肢 ~加速するエネルギー転換への流れ~

ウクライナでの紛争は、とりわけ欧州におけるエネルギー安全保障に大きな影響を与えています。石油・ガスの市場だけでなく、マクロ経済に様々な悪影響を及ぼします。特に、ウクライナでの紛争とそれに伴うロシアへの制裁は商品供給を混乱させ、パンデミックとその余波によって引き起こされた「コストプッシュ」インフレをさらに悪化させています。 一般的にインフレと戦うために使用される主要な政策ツールである金利の引き上げは、インフレの需要側に影響を与えるものであり、供給のボトルネックに対処することはほとんどないため、多くの国の金融政策当局者にとって、現在直面している課題への対応は次第に困難になっています。私たちの見解では、こうした状況によって、ヨーロッパや他の地域においてクリーンなエネルギー転換を加速する必要性はむしろ高まっています。 ソリューション: エネルギー転換の加速 さらに詳しく言うと、ロシアの石油・ガス供給がさらに途絶えた場合、特に欧州では短期的に困難な選択に直面します。供給ギャップを埋めるために、CO2排出量が大きいことで知られる石炭などのすぐに利用可能な技術に頼るか、あるいはエネルギー需要を減らすために厳格な措置を課すか、という選択です。 CO2排出量を高める選択肢は、多くの政府や企業による科学に基づく気候変動への取り組みを損なうリスクを伴います。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、この選択肢は悲惨な影響を与える可能性があると警告しています。代替案は、需要抑制に焦点を当てるものですが、こちらは賃金の引き下げや失業を通じて労働者に悪影響を及ぼし、不平等を拡大させ景気後退につながるリスクを伴います。そもそも、そのような選択は、政治的に実行不可能かもしれません。 環境への損害、あるいは社会的な損害のどちらを取るかという「ソフィーの選択」[1]を迫られるのであれば、 政策当局者にとっては「第3の選択肢」を検討することが有益かもしれません。それは、短期的に低炭素エネルギーへの多額の投資を促進することです。 再生可能エネルギーの(現地)生産を増やすには時間がかかりますが、通常はその生産施設を建設するための期間は、火力発電や原子力の生産施設よりもはるかに短く、依存関係も少なくなります。たとえば、パイプラインによって供給されるロシアの天然ガスに取って代わるには、欧州が域外からより多くの液化天然ガス(LNG)を輸入する必要があります。これは、欧州に新しく特別な輸入施設を建設することを意味し、おそらく、LNG輸出がすでにピークに達し、他の市場からも注目される米国やその他の国で新しい輸出施設を建設することも意味しています。 欧州のLNGをめぐる有力企業が集まったとしても、ロシアのガス供給の3分の1を置き換えるには、少なくとも2年、場合によってはそれ以上の時間がかかるでしょう。そうしている間に、再生可能エネルギーの容量が増加する一方、政府は住民に対して、より少ない電力消費と熱源を電化するためのインセンティブを進化させることが可能となります。欧州では天然ガス消費量の約半分は住宅での使用が占めているため、域内でのガス暖房への依存度を下げることは大きなインパクトとなり得ます。これは、たとえば熱移動のテクノロジーを活用するため省エネ効率が高いとされるヒートポンプに切り替えるためのインセンティブ(減税、クレジット、またはリベート)などを通じて実現することができるでしょう。 [2] 需要側を見ると、第二次世界大戦などの大きな紛争の初期段階と同様に、政府による意識向上キャンペーンが、たとえば省エネなどのサポートを構築するのに役立つことが証明されています。消費の抑制は国のエネルギー自給を強化することにつながるため、エネルギー供給の危機に直面している今、政府による同様のアプローチが正当化される可能性があると考えています。 リスクの管理 低炭素エネルギーへの転換を加速することは、海外から化石燃料を輸入する必要性を減らすことによって、特にヨーロッパでのエネルギー安全保障を改善するものと考えられます。また、化石燃料からの排出量を削減することにより、気候変動を緩和するのにも役立ちます。さらに3つ目の利点として、インフレリスクの管理にも役立つ可能性があります。 たしかに、ガス火力発電に取って代わり、住宅用暖房に電力を供給するために必要なクリーンエネルギー容量を構築するには、多額の支出が必要になります。この支出によって、とりわけ銅、コバルト、鉛などの商品市場に、より広範なインフレ効果をもたらす可能性もあります。 移行を加速させるためには、炭素税の引き上げも必要になりそうです。化石燃料を含まない合理的な代替品の入手可能性によって相殺できない場合は、化石燃料価格にさらに上昇圧力を引き起こす可能性もあるでしょう。 しかし、この「グリーンフレーション」は、石油やガスなど現在インフレを促進している種類の主要コモディティへの需要が減少することによって、大部分は埋め合わされる可能性があります。そして長期的には、再生可能エネルギーは燃料の投入コストが不要となるため、デフレにつながるものと思われます。 このような変化が起こるためには、欧州連合(EU)や欧州の各国政府は、再生可能な技術とインフラストラクチャーに多額の投資を行う必要があるのです。 公共資本だけでは十分ではありません。理想的には、低炭素投資のための減税やその他のインセンティブを与え、(たとえば、商業化されていない新しいテクノロジーに対してより多くの研究開発に資金提供を行うなど)プロジェクトのリスクを軽減することによって民間資本が集まることが期待されます。 さらに、市民や企業にもこのインフレとの戦いに取り組むよう促すべきです。ネットゼロの未来に向けて、人々の考えとインセンティブを調整するためには、現在のような良いタイミングはありません。…

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